どちらも間違っているわけではありませんが、クラウドコンピューティングが巻き起こす変革のごく一部分に過ぎません。2015年に米国で顕在化した変革が、2016年にはさらに加速し、早晩、日本へ波及するのも間違いないでしょう。
IT業界ではこれまでもたびたび、大きな地殻変動が起きています。いささか古い話になりますが、パソコンメーカーの米コンパックコンピュータによる米ディジタル・イクイップメント(DEC)の買収は、メインフレームやミニコンの時代の終焉を強く印象付ける出来事でした。かつてのDECは、IBMに対抗する世界第2位のコンピューターメーカーだったからです。
そのコンパックもその後HPに買収されています。最近ではオラクルによる米サンマイクロシステムズの買収もUNIXワークステーションの時代の終わりを感じさせる出来事でした。
ただ、こうした地殻変動が、日本国内のIT業界に与えた影響は限定的でした。せいぜい外資系ベンダーの営業担当者がどこへ転職したかが話題になる程度。ある製品の販売権が別の会社に移っても、製品提供自体はおおむね継続されましたし、その製品を代替する製品は常にありました。
別の言い方をすると日本のIT業界は20年間、あまり大きな変化を経験してこなかったのです。
クラウドの到来はどんな変化をもたらすのでしょうか?その苛烈さは、冒頭に触れたカリフォルニアのITサービス会社の、この2年の変化を見るとよく分かります。
この会社はもともとマイクロソフトの電子メール/グループウエアサーバーである「Microsoft Exchange Server」を中心としたITインフラの再販を手掛けており、導入したサーバーを顧客に代わって管理する「Exchangeアドミニストレータ」業務も請け負っていました。サーバーのデータのバックアップやワクチンソフトの適用も重要な業務でした。さらに5~6年の一度のペースで訪れるExchange Serverのバージョンアップ作業の受注は、この会社の大きな収入源でした。