
NRI楠真 強いITはココが違う
目次
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「デジタルトランスフォーメーション」なんて日本ではきっと無理
世界のIT業界を席巻する「エコシステム」。前回「どうして日本人は『エコシステム』が苦手なのか」で説明したように、横のつながりを活用し、利害関係を越えて柔軟に手を組む米国流のビジネス文化が、米国のエコシステム隆盛の背景にあると私は考えています。しかしとある友人は私の「仮説」に異を唱えます。
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どうして日本人は「エコシステム」が苦手なのか
エコシステム――。米国の、特にIT企業を訪問すると最近、必ず耳にする言葉です。ベンチャーだろうが大手だろうが「エコシステム」が大好きなのは同じ。昨今の米国では、企業戦略のキーワードとしてすっかりエコシステムが主役の座に着いています。ところが、これが日本に帰ると一変するのです。
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「利益300億円」でも悔いが残った、若き日のコンサルティングの話
まだ30代のコンサルタントだったころのある晩、私は神楽坂の高級料亭でクライアント企業の幹部から接待を受けていました。その2年前にコンサルティングした案件が成功裏に終わり、クライアントが実質的に300億円以上の利益を得たお礼でした。
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ジョブズとNewton MessagePadと変わらぬ下心
今年に入って、株式市場が世界的に大幅下落しています。それと関係あるかどうかわかりませんが、1月の終わりから2月の頭にかけて発表された大手IT企業各社の決算も全体的に低調でした。米IBMが15四半期連続減収になったのはともかく、米アップルの時価総額が、一瞬ですが米グーグルに抜かれたのにはびっくりしま…
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「究極のプロマネ」はなぜ、よき御用聞きになるのか
今から30年ほど前。鎌倉で研究員生活がスタートしたころのことです。シンクタンクの研究員といっても入社前の想像と現実は全く違って苦労の連続でした。悪戦苦闘の日々を過ごしているころ、尊敬する先輩にこんなことを言われました。「楠君、サービス業の定義っていったい何だと思う?」
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「ソフトウエア会社の宝」が日本のITでないがしろにされる理由
米国の有力ソフトウエア企業で、品質管理の話を聞いてきました。相手は品質管理部門の女性ヘッドで、何十億ドルもの売上をあげる製品開発部門全体のトップにダイレクトにレポートする人物です。彼女は穏やかな物腰で、その会社の品質管理のプロセスを説明してくれました。
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開発じゃない、問題は運用だ、特にクラウドでは
前回のコラム(「東洋一のデータセンター」が時代遅れになった理由)で野村総合研究所(NRI)の日吉データセンターのクローズを話題にしました。その続きと言っては語弊がありますが、少し1990年代の昔話をさせてください。テーマはシステムの運用。運用を我々がどう作ってきたか、若い人はあまりご存じないかもし…
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「東洋一のデータセンター」が時代遅れになった理由
2015年末も押し迫った12月28日、横浜市の慶應大学日吉キャンパスにほど近いある建物に、野村総合研究所(NRI)の役員と幹部が大勢顔をそろえていました。同所にあるNRIの「日吉データセンター」の閉所式がひっそり執り行われたからです。
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楠真の2016年展望:クラウドへの危機感が日本のIT業界を変えるか?
前回のコラム「アマゾンがIT産業を飲み込みはじめた2015年」では2015年を振り返って、Amazon Web Services(AWS)に代表されるクラウドコンピューティングの潮流が、IT業界全体を大きく変えつつある現状を概観しました。今回はこれを踏まえて2016年のIT業界を展望してみたいと思…
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アマゾンがIT産業を飲み込みはじめた2015年
2015年も早いもので、忘年会のシーズンになりました。ちょっと気が早いですが今回は、2015年のIT業界の地殻変動を振り返りたいと思います。IT業界にとってはひと際大きな変動のあった1年だったと私が考えているからです。変動の中心はもちろん「クラウドコンピューティング」です。
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「ダメなITベンダー」にならないためにやるべきたった1つの仕事
このコラムと同じく月曜日更新の「木村岳史の極言暴論!」。日経コンピュータ元編集長の木村 岳史さんが、ITベンダーに毎回とても厳しい話を書いています。SIビジネスをやってきた立場からすると、「確かに」と認めざるを得ない指摘も多いのですが、その一方で木村さんにお叱りを受けるようなダメなITベンダーばか…
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サイバーセキュリティは有望なFinTech
国内の企業や公共機関などを狙ったサイバー攻撃が多発しています。金融機関も例外ではありません。例えば警察庁が9月に発行した報告書によると、今年上半期のネットバンキング不正送金の被害総額は15億4400万円で、昨年の下半期より大幅に増えているそうです。先日たまたま、セキュリティ企業の役員と話す機会があ…
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Fintech企業に漂う、危険なニオイ
今年(2015年)の元旦に日本経済新聞がFintechを米国の動きとして特集記事で取り上げました。これが日本へFintechを本格的に紹介した最初の記事となりました。それからというもの、国内金融業界は「Fintech」に取り憑かれているようです。「Fintech」というワードを目にする機会は確か…
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日本のIT、「ソフトが世界を飲み込む時代」に置いてきぼり?
この1カ月、米Amazon Web Servicesや米オラクルのイベントに参加する傍ら、国内の金融業界のIT戦略に影響力を持つ重鎮たちと話し合う機会を持ってきました。クラウドへの急流やアマゾン、オラクルのそれぞれの戦略に対する私の見立てを話し、彼らの意見を聞きたかったからです。そこで聞こえてきた…
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オラクルが「クラウドネイティブ」と言わない理由
先週は、サンフランシスコ中心部で開催された米オラクルの年次イベント「Oracle OpenWorld 2015」に参加してきました。ラリー・エリソン会長兼CTO(最高技術責任者)のカリスマは健在でさすがの一言でした。アマゾンを仮想敵に指名し、クラウドに挑む姿勢を熱く語るエリソン会長の話を聞きながら…
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「突然落ちて当たり前」にエンタープライズITは堪えられるのか?
少し前に、シアトルのアマゾン本社に出掛けて米Amazon Web Services(AWS)の幹部の前でプレゼンする機会がありました。セキュリティーに関する日本企業の考え方や、レガシーアプリケーションを運用するためにどれほどの努力が必要なのか、私は丁寧に説明しましたが、話せば話すほど彼らの顔つきが…
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AmazonがエンタープライズITを「ぶっつぶす」
先週、ほぼ20年ぶりに米国ラスベガスを訪れました。米Amazon Web Services(AWS)主催のイベント「Re:Invent」に参加するためです。次々と発表される新サービスにどよめく会場は圧巻で、いよいよアマゾンがエンタープライズITをターゲットに据えてきたと分かりました。今後10年のI…
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「新規事業」失敗の教科書
クラウド技術やビッグデータ、マシンラーニングといったIT技術革新をトリガーにした新規ビジネスが世界中で注目を浴びています。ドイツ政府はIndustry 4.0という政策を発表し、国を挙げて製造業の競争力強化を図ろうとしています。また米国では「Fintech(フィンテック)」という名前で金融サービス…
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「できろ」に気づかず、大失敗した話
「できろ」は何もITに限ったものではありません。できろは日本企業のあらゆる場所に顔を出し、組織を蝕んでいきます。今回は私がまだコンサルタントだった90年代に、「できろ」を放置した結果、招いた残念な事業の思い出を語りましょう。
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「できろ」という命令がIT組織を腐らせる
前回や前々回のこのコラムでも触れたように、多くのIT部門のコアコンピタンスは「根性」です。基本戦略は「みんながんばれ」。そういうIT部門の現場では「できろ」という命令がよく見られます。「できろ」は要するに「何とかしろ」と同義語の命令だと私は解釈しています。ゴールも方法も明確に示されずに一方的に命令…