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 5年前の2010年3月30日、ペイパルは日本で一つの大きな決断を下した。それまで提供していたペイパル専用口座を持っているユーザー同士で送金できるサービスを3月31日以降停止すると発表したのだ。理由は明白だった。同年4月1日から施行された「資金決済法」による規制だ。

 資金決済法は決済業界内では「ペイパル法」と言われるほど、ペイパルを強く意識して制定されたものとされている。資金決済法はそもそも、新たな決済サービスのイノベーションの促進を目的にしている。それまで銀行業以外、認められていなかった送金などの為替取引を、少額の取り引きに限って認めた法律だ。

 だが、条件を設けていた。「資金移動業者」として金融庁に登録した企業に限ったのだ。資金移動業として登録していないペイパルは商用利用以外の送金ができなくなり、限定的なサービスの展開に追いやられた。

 その後、2012年5月にペイパルはソフトバンクと50%ずつ出資した合弁会社、日本ペイパルを設立。同年8月には資金移動業としての登録を果たした。ペイパルはこの年の3月、スマートフォンのイヤホンジャックに小型端末を挿すことでクレジットカード決済端末として利用できるスマホ決済サービス「PayPal Here(ペイパルヒア)」を発表。米国、カナダ、オーストラリア、香港でテストマーケティングを展開していた。5カ国目の国として日本市場を選んだのだ。

 その後、同様のサービスは一気に広がった。2012年9月に開始されたペイパルヒアを皮切りに、日本のスタートアップ企業のコイニーが10月、楽天が「楽天スマートペイ」を12月に開始した。翌年の2013年5月には同サービスのパイオニアである米スクエアが日本市場に参入したことで一気に競争が激化した。

 確かにペイパルは日本市場のスマホ決済サービスで先陣を切った。だが、その後のシェア争いで後塵を拝してしまった。アプリの市場動向調査や分析ツールを提供する米アップアニーの子会社、ディスティモが出している調査データによれば、2015年4月時点で各社の累積ダウンロード数を見ると、スクエアが14万3817、楽天が9万5354、ペイパルが2万3011、コイニーが1万4617。スマホ決済アプリのダウンロード数で業界3番手にとどまっている。この要因は明確だ。ペイパル以外、資金移動業者の登録をしていないからだ。ペイパルのみ、加盟店の身元確認など厳格な運用を求められることになってしまった。