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 2012年に起きた、ファーストサーバーによるデータ消失事故。同社は、ユーザーに対して自主的な賠償を表明した。もし、これを不服として損害賠償請求する場合、ユーザー企業はどのような準備が必要になるのだろうか。

 2012年6月、ファーストサーバー(大阪市中央区)で、データ消失事故が起きた。同社はレンタルサーバー会社として大企業や官公庁の顧客も多数抱える業界大手である。5000社以上のデータが消失し、顧客のウェブサイトがダウンするというトラブルが発生。業界は騒然となった。

 この事故を受けて、ファーストサーバーは外部の弁護士を委員長とする第三者委員会を設置し、原因究明に乗り出した。顧客に対する損害賠償については、受領したサービス対価の総額を上限として賠償する方針を表明した。

 この事故に関して、公刊物に掲載された裁判例は見当たらない。事故後、訴訟提起されたかどうかは不明だ。

 もしユーザー企業が損害賠償請求した場合、裁判所はどのような判断を下すのか。同様の事故の裁判例を見ながら考えてみよう。

データ消失に関する二つの裁判例

 最初に取り上げるのは、東京地裁による2001年9月28日の判決だ。これは、ISP(インターネット接続事業者)である被告が、レンタルサーバー内にある原告のウェブサイトのファイルを消滅させたことに関する損害賠償請求事件である。

 判決では、被告は保管対象物であるデータを損壊・消失させない義務があるとして、損害賠償義務を認めた。もっとも、「原告は、インターネット通信固有の原因により本件ファイルが消滅する危険は予見していたと判断され、本件ファイルの消滅という結果発生に対する予見可能性が十分肯定され」るとして、原告がバックアップコピーを取っていなかったことを理由に、5割の過失相殺も認めている。

 2009年5月20日にも、東京地裁によって、同様の訴訟に対する判決が出ている。原告は、A社との間でサーバーのホスティングサービス契約を締結していた。しかし、A社が利用していた被告(レンタルサーバー業者)の共用サーバーに障害が発生したことが原因で、原告のデータが消失した。そのため、原告が損害賠償を請求したという事案だ。

 この訴訟の判決では、被告は直接の契約関係がない原告に対して、当然、データ消失の防止義務を負うことはない、とした上で、以下のような判断が下された。

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