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     音楽業界がビッグデータ革命に揺れている。定額で聴き放題のストリーミング(逐次再生)型サービスがいよいよ日本でも本格普及。その魅力は、膨大なカタログから消費者一人ひとりにその瞬間のお薦めの曲を提案できる点にある。そのためには消費者の好みを学び、楽曲1曲ずつの「個性」も把握し、両者をマッチングさせる必要がある。よりどころになるのがデータだ。配信会社はライバルより少しでも多く曲調や消費者の行動状況に関するデータを集め、さらに「深く」「広く」分析しようとしのぎを削る。その裏側を、音楽専門のビッグデータ分析会社である米グレースノートの日本法人でCTO(最高技術責任者)を務める渡辺泰光取締役や、米国本社の共同創設者であるタイ・ロバーツCSO(最高戦略責任者)が数回に渡ってひもといていく。

 音楽がデータと“出会った”のは1993年だ。当時パソコンにCDドライブが標準装備されるようになり、Windows95がリリースされた95年を境に、家庭や職場のパソコンでCDに入っている音楽を聴く人が急増。しかしCD本体にはアルバム名やアーティスト名も曲名も入っていなかった。パソコンにCDを入れて再生を始めても、画面上には「Track1、Track2、Track3・・」と表示されるだけだった。

図●米グレースノートの歴史
図●米グレースノートの歴史

 この問題に早い段階で気付き、楽曲に対してデータという新しい価値を与えて解決しようと考えたのが米グレースノートだった。「メタデータ」という概念を打ち出し、音楽とデータの歴史はまさにこのとき始まったと言ってよい。

 オーディオCDのメタデータベース「CDDB(CD DataBase)」は、ティ・カンによって1993年に誕生した。そもそもは彼が開発した音楽再生ソフト「xmcd」の機能の一部として開発された。その後、グレースノートの創業メンバーであり、現在米本社でCTO(最高技術責任者)を務めるスティーブ・シャーフと共に、インターネットを通じてアクセスできるデータベースに改良。それがCDDBだ。1995年にリリースされた。

 当初のCDDBは2バイトコードに対応しておらず英語だけしか扱えなかった。ただ楽曲本体と曲の時間情報しか入っていないオーディオCDに、ネット経由でメタデータという新しい情報を付与するアイデアは画期的なものだった。CDDBが持っていたデータの種類としては「アルバム名」「アーティスト名」「曲名」「ジャンル」「発売年」「メモ」などである。