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 企業は、売り上げにつながるマーケティング活動の提案と、マーケティング部門の貢献を明確に測る手法をどう磨くべきなのか。「リードジェネレーション(見込み客を獲得すること)」や「デマンドジェネレーション(見込み案件を創出・発掘すること)」に携わってきたシスコシステムズの中東孝夫氏に、6話にわたって紹介してもらう。

 第3回は、セールスしたい自社商材のポジショニングについて解説する。


 セグメンテーションやターゲティングが完了したならば、次はセールスしたい自社商材のポジショニングを決める必要があります。

 ポジショニングと言っても競合他社との品質や機能の比較に限りません。筆者はマーケターとしてモノを売る方法を考える人間でもありますが、同時に10年以上にわたって業務で使うBtoB向けマーケティングサービスの購買担当でもあります。その購買経験から、まずはBtoBにおける購買とはどういうものかを定義し、その中で自社サービスをどのようにポジショニングするかについて説明します。

BtoBにおける購買とは

 様々な場所で語られている通り、BtoCの個人による購買活動とは異なり、BtoBは「組織的な意思決定による購買」と定義されています。だからこそ窓口担当者だけでなく、決裁者やインフルエンサー(購買に影響を与える人)へも自社商材が購入されるように影響を与える必要があります。しかしここでは「誰に説明すべきか」という定義よりも、「何と比較されるか」について重点的に説明します。

 営業部門にリード(見込み客情報)を渡しても、結果として失注(ロスト)してしまう場合が多々あります。その営業担当に理由を聞くと「顧客から予算がないと説明を受けた」という回答があります。しかし顧客のすべての予算枠がゼロになるということは現実として考えにくいので、正しくは「顧客の予算枠の中で、その商材への投資がランクインしなかった」と捉えるべきでしょう。

予算枠に入らなければ、当然投資されない
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 BtoBにおける購買には、通常、予算枠が設定されます。購買担当者は、その予算枠の中で導入するものを決定します。ここで重要なのは、どれだけ同業他社よりも比較優位にあっても、予算枠に入らなければ、導入は見送られるという点です。

 購買担当者は、毎期の予算枠の中で順番に予算を割り振り、予算枠をオーバーした時点で導入を見送る、という判断を行います。競合他社との比較よりも、他の投資案件との比較が先に実施されるのです。

 購買担当者は、不可欠な投資~言い換えれば見送ってしまうと社内や自身にデメリットが発生する投資~を最優先に設定します。予算が厳しい状況では、こうした最優先投資だけで予算枠が埋まってしまいます。結果として喫緊でない投資(たとえ必要であっても今回は見送ることができる投資)は常に見送られることになります。このように予算のランキングに入る・入らないが購買判断を決めるため、BtoBでは、なぜその投資が必要なのか、投資をしないとどんなデメリットが発生するのかをきちんと説明し、他の投資案件とのポジショニングを明確にする必要があるのです。

 ではどのようにして、他の投資案件とのポジショニングを明確にすればよいのでしょうか。

 筆者がマーケティングのプランを練る際、顧客の予算枠にある他の投資案件と、自社商材のポジショニングのために、製品チームと以下の7項目を可能な限り確認するようにしています。

マーケティングプランを練るために確認する7項目
ベネフィットと新機能カタログなどに記載されている情報です。「速度が○○%向上」「XXとの連携が強化」など、その商材のユニークなセールスポイントです。ただ、この説明だけで導入が決まるには、その機能が争点となっている場合だけです。
商材によって解決される顧客の課題導入前の顧客が抱えているであろう課題を明確にします。「特定の業務フローで手作業が多く、ミスが多発している」「サーバー管理に人手が割けず、万一の際にサポートできない」などです。
現状維持のリスクと機会損失、導入の緊急性BtoBの購買で重要な判断要素となる部分です。「来年ではなく今年導入する理由」を明確化します。「標的型攻撃が開始されれば情報漏えいにつながる」「システムのレスポンスが悪いことで離脱率が増加しており、年間○○億円の機会損失が発生する」などです。
導入事例と信頼性顧客企業の業界や先進企業での導入事例を元に、商材の信頼性を訴求します。
競合他社との比較競合他社と比較し、自社商材の何が優れているかを説明します。
コストとROI必要な投資コストと得られる効果を金額で比較できるようにします。先ほど述べたリスクや機会損失の数値化でも構いません。
コンペリングイベント他の投資案件を押しのけてでも今年に導入してもらう理由を設定します。「OSのサポート切れ」「税制変更前に」「3月末までの特別価格」など。

 このようにして、セグメンテーションやターゲティングによりターゲット顧客を明確化し、その顧客の投資案件の中で自社と商材のポジショニングが明確化されることで、売上が向上する素地ができると考えています。

 「どういった企業が顧客となり得るか」と「顧客の投資案件の中でのポジショニング」を定義できれば、セミナーのアジェンダや、広告のメッセージ、メルマガでの訴求内容、プレゼンテーションで必要な各種調査の数値などが明確化し、今後のマーケティング活動の優先順位も決められるようになります。

 同業他社とのポジショニングの前に、顧客の予算枠にどうやって入るかについて検討することをお勧めします。

 また、もう一つ大事な点があります。

 それは「今期の予算枠から漏れても、来期にまたチャンスが巡る」という点です。こうした特性はBtoB特有のものです。特に今期にその必要性を周知したにも関わらず、ランキングから漏れた案件は、来期予算で優先順位が上がる可能性が高いのです。また、商材によっては「追加予算」や「期末の余剰予算」で急にランクインする場合もあります。

 こうした案件をフォローするためには、中長期にわたるリード(あるいは案件)の管理が必要になります。本来ならば営業担当者が管理すべきですが、長期的かつ広範囲な管理は営業部門ではなかなか難しいのが現状で、マーケティングとしてサポートする必要があると言えます。

 次回はこうしたリード管理について詳しく説明します。

中東 孝夫(なかひがし たかお)
シスコシステムズ合同会社
中東 孝夫(なかひがし たかお) 消費財メーカーの宣伝部にてTVCMやダイレクトマーケティングを経験後、BtoBのマーケターとしてさまざまな広告・イベント・顧客データ構築などを担当。2001年からリードジェネレーションに携わり、顧客DBの構築や、BtoBマーケティングの立ち上げを経験。現在、外資系IT企業においてマーケティング戦略立案から顧客DBの構築、デジタルやテレマーケティングの企画立案から実行までを幅広く担当。