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 この連載では、仕事で勝てる「ビジネス文章力」をテーマにしている。今回は「相手理解不認知症」の治療である。仕事では自分の考えたことを説明相手に理解してもらうことが欠かせない。特に説明する内容が相手にとってあまり馴染みがない、専門的な内容の場合は、なおさらである。

 このような「相手の知識がない場合の説明」で重要なのは、相手は何が分からないのか、何を知らないのかを把握し、相手にとって理解できる内容で説明することである。自分はあたりまえに使う言葉を、相手も知っていると思ってはダメなのだ。

 相手に理解がない内容を説明するための文章では、このようなことが欠かせないが、これができていない文章が多い。このような文章は上司の不満につながり、仕事の評価も低くなる。今日の患者さんも、そういう人だった。

湊戸 真鈴(みなと まりん 仮名 35歳 女性 課長代理)の症例

 湊戸氏の相談はパッケージシステムを使った新規開発のリスク対策の文章に関することである。上司であるシステム企画部長から「君の考えたリスク対策の説明文章は全く意味が分からない」と言われたとのことだ。

 湊戸氏は35歳で、東京の大手寝具メーカーE社のシステム企画部の課長代理としてシステム企画を担当している。湊戸氏はE社に入社後、最初にシステム開発部でシステム開発を担当、その後設計、プロジェクト管理を担当した。

 半年前に、現在のシステム企画部に異動し、現在はシステム企画担当として、最近システム企画部長に命じられた新経理・会計システムの導入に関する仕事を行っている。

 E社では20年前から使っている自社開発の経理、会計システムがある。システムがバッチ処理を基本にしていることから、売上管理、原価管理、利益管理がリアルタイムで実施できず、業績把握が遅いということが課題となっていた。

 昨今、世界的な会計基準に合わせる動きなどもあり、新しい経理・会計システムの導入が必要だった。しかし、E社のシステム部門には新しい経理・会計システムを構築できるエンジニアがいなかった。

 そこで、同業他社がどのような経理・会計システムを導入しているか調査会社を使って調べたところ、パッケージベンダーF社のパッケージシステムが使いやすく、機能も充実していることが分かった。E社にとってパッケージを使った開発は、初めてである。

 そこで、E社の経営層は、F社の経理・会計パッケージを導入する方針とし、システム企画部に導入計画の検討を命じ、湊戸氏が担当になった。湊戸氏はシステム企画部長から同プロジェクトのリスクと対策の検討を命じられたのを受け、自身の調査結果を説明した。

 システム企画部長は説明を黙って聞いていたが、説明が終わると「意味が分からない。これでは経営に説明できない。君には他人に説明する資格がない」と言った。湊戸氏にとって、これは想定外だったらしい。

 「どのような文章なら部長からオーケーがでるのか分からない。部長に認められたい。自分に必要な文章治療をしてほしい」。湊戸氏が文章治療室に来られたのは、こういう経緯だった。

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