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 この連載では、仕事で勝てる「ビジネス文章力」をテーマにしている。良いビジネス文章を書きたいなら、単に礼儀作法を知っているだけではダメである。ビジネススキルを向上させること、これが良いビジネス文章を書くための条件である。

 筆者は、「文章は忠実に人の能力を写す鏡」だと考えている。文章の不備は書いた人間の不備、文章がダメなら書いた人間の能力も不十分。文章が悪いのではない、人間が悪いということだ。

 当文章治療室では、筆者がこれまで実務現場で経験してきたケースを使い、さまざまな文章力不足を「病」にたとえ、治療というコンセプトで、スキルアップの具体的方法について紹介する。

 今回は「目標達成力欠乏症」の治療である。仕事では、最終的な目標(ゴール、到達点)を設定し、それに向かってタスクを洗い出し、遂行して達成することが必要だ。しかし、少し難しい課題(いわゆる壁)にぶつかると、目標を下げてしまう人が多い。

 目標を下げてしまえば、最初に決めたゴール、到達点にたどり着くことはできない。あるべき目標に「到達できる人」と「できない人」には、能力に決定的な違いがでてしまうのだ。今日の患者さんも、目標達成力に問題がある人だった。

赤坂次郎氏(仮名 31歳 男性 課長代理)の症例

 赤坂氏は、首都圏の中堅小売りチェーンA社のIT企画課に勤務するIT企画担当の課長代理である。A社入社後にシステムエンジニアを担当し、その後システム開発プロジェクトで管理業務を行い、5年前から現在のIT企画担当になった。

 IT企画担当といっても、実態の仕事はシステム予算の策定、執行管理などの定型業務であった。A社は旧来型の販売チャネルを通じた旧来型の実店舗販売しかしておらず、ITを使った販売促進、セールスサポートなどは利用していなかった。

 赤坂氏の仕事振りは優秀と評判であった。なぜなら、新しい企画を考えるときも、問題が生じた場合の解決策を考えるときも、無理をせず現実的な手段で解決することがほとんどであり、失敗することが少なかったからだ。

 赤坂氏は「これまでにない新しいこと」をすることはなかったが、無理をせず、失敗するような仕事をしないので、A社内では順調に評価されてきた。このため、31歳で課長手前の課長代理のポジションに就いたのだった。

 小売業であるA社は古い体質の会社だったが、近年は外部環境が大きく変化していることを自覚し、経営陣はその対策を検討すべきと考えていた。しかし、現場にはそのような危機感はまだ少なく、旧来型の販売でも問題ないと思っていたのだ。