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 この連載では、仕事で勝てる「ビジネス文章力」をテーマにしている。今回は「上司不安文章病」の治療である。仕事の課題と対策を上司に説明する文章では、上司から「その対策で本当に大丈夫か、漏れはないか」思わせないことが必要である。「上司を不安にさせない文章」を書くことが求められる。

 このような文章で重要なのは、上司の視点で「考慮の漏れがないか」を説明することである。自分の視点で説明しても上司は安心しない。上司の視点で「漏れがないか」を説明しないとダメなのだ。

 「上司を不安にさせない文章」では、これが欠かせないが、これができていないことが多い。このような文章は上司の不満につながり、仕事の評価も低くなる。今日の患者さんも、そういう人だった。

本町浩三氏(ほんまち こうぞう 仮名 36歳 男性 課長補佐)の症例

 本町氏の相談は、パブリッククラウドで開発する新システムのセキュリティ対策に関することである。上司である情報システム部長から「君の考えるセキュリティ対策は十分でない」と厳しく言われたとのことだった。

 本町氏は36歳で、関西の中堅雑貨メーカーV社のシステム企画課の課長補佐としてシステム企画を担当している。本町氏はV社に入社後、最初にシステム開発部でシステム開発を担当、その後設計、プロジェクト管理を長い間担当した。

 3カ月前に現在のシステム企画課に異動し、現在はシステム企画担当として、V社が新規開発を予定している「ネット通信販売システム」のシステム計画策定に関する仕事を担当している。

 V社では15年前から全国のショッピングモールや百貨店に出店している雑貨店に商品を卸し、顧客向けに商品を提供している。しかし、近年ではリアル店舗の販売は減少傾向で、雑貨業界ではネット通販の売上割合が増加している。

 そこでV社でもネット通販を開始することになった。同業他社がどのようにネット通信販売システムを構築しているかを調べたところ、パブリッククラウド上に、北米系パッケージのネット通信システムを稼働させていることが分かった。

 そこでV社でもパブリッククラウド上でシステムを稼働させる方針とし、情報システム部長に導入計画の検討を指示した。そこで担当になったのがシステム企画課の本町氏である。

 情報システム部長は、本町氏にクラウド上で稼働する通販システムのセキュリティ対策に関する検討を指示、本町氏は自分なりに検討した結果を情報システム部長に説明した。

 情報システム部長は説明を黙って聞いていたが、説明が終わると「全体の対策が分からない。これでは経営に説明できない。君は上司に説明する基本が理解できていない」と言った。このことは本町氏にとってかなりショックだったらしい。

 「どのような文章なら情報システム部長が納得するか分からない。自分に何が足りないのかを知りたい。必要な文章治療をしてほしい。」本町氏が文章治療室に来られたのは、こういう経緯であった。

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