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ABCEDモデルでポジティブになる

 ポジティブ感情が斬新な発想に役立つ反面で、ネガティビティが全く不要かというと、決してそういうわけではない。たとえば楽観的なアイデアを批判的に検証してより現実的なものにする場合、ネガティブなものの見方が極めて重要になるだろう。つまり批判的に考えるクリティカル・シンキングにはネガティビティが欠かせないということだ。

 とはいえ、ふさぎ込んだ状況で斬新なアイデアを発想するのが困難なように、発想の翼を広げるには、やはりネガティブ感情をポジティブ感情に切り替える必要がある。実際、私たちは、前向きになりたいとき、特定の行動をとってポジティブ感情を持つようにしているものだ。たとえば、人と話したり、軽い運動をしたり、音楽を聴いたりと、ポジティブになる方法は人それぞれではないか。

 そのような中で、落ち込んだネガティブな気分をポジティブに変える「ABCDEモデル」はぜひとも理解しておきたいテクニックだと言える。これは心理学者アルバート・エリスが開発したものだ。

 ABCDEモデルでは、私たちが現実を把握する際に用いる非論理的思考や自己矛盾に注目し、その論理的欠陥を論理的に思考し直して、物事に対する正しい解釈を導き出す。これにより、間違っていた解釈やそこから生まれたネガティブ感情の改善を目指す。

 この手法がABCDEモデルと呼ばれるようになったのは、次のように5つのアルファベットが非論理的思考を矯正する手順を示しているからだ。

  • A(困った状況/Activating event)・・・直面する困った状況について考える。
  • B(思い込み/Belief system)・・・困った状況下で機械的に抱く思い込みを列挙する。
  • C(結末/Consequence)・・・思い込みの結果、抱く感情を列挙する。
  • D(反論/Dispute)・・・思い込みに対する反論を行う。
  • E(効果/Effect)・・・反論したあとの元気づけを行う。

 たとえば資格試験に落ちたとしよう(A)。これにより「私は何をやっても駄目だ」という思いが機械的に浮かぶかもしれない(B)。その結果、将来に悲観的になり、投げやりな感情、すなわちネガティブ感情を抱くことになろう(C)。

 しかし本当に「私は何をやっても駄目」なのか。たった1つの試験に落ちただけで、何もかも駄目だと決めつけるのは、結論を一般化あるいは飛躍させ過ぎている。したがって、「私は何をやっても駄目だ」という考え方は非論理的な思考である(D)。

 このように考えれば、「1度の失敗でくよくよするな。何もかもが駄目なわけではない」と自分を励ますことができるだろう(E)。

 ネガティブ感情は斬新なアイデアの敵だ。どこかでネガティブ感情が芽生えたら、その基になっている「思い込み」について考えてみよう。そしてその思い込みに対して論理的に反論しよう。この手法でポジティブ感情を育んで、さらに素晴らしいアイデアの発想につなげたい。

中野 明(なかのあきら)
ノンフィクション作家。同志社大学非常勤講師。1962年、滋賀県生まれ。神戸在住。歴史、経済経営、情報の3分野で執筆する。主な著書に『幻の五大美術館と明治の実業家たち』(祥伝社新書)、『グローブトロッタ―――世界漫遊家が歩いた明治ニッポン』『腕木通信――ナポレオンが見たインターネットの夜明け』(以上、朝日新聞出版)、『裸はいつから恥ずかしくなったのか――日本人の羞恥心』(新潮選書)など、また近著に『デザイン思考でゼロから1をつくり出す』(学研プラス)がある。ITpro/PC Onlineでは、「ナカノアキラ」の筆名で、「タブレットだけで仕事するOffice for iPad大活用」「Excelグラフはこのツボを押さえなさい」など多数の連載記事を執筆している。