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 極上のアイデアを発想する上で、いま注目を浴びているのがデザイン思考だ。デザイン思考とは「イノベーションを生み出すために、卓越したデザイナーの思考法を活用すること」を指す。

 いまや産業界でデザイン思考が実践されるのみならず、東京大学や慶應義塾大学にも、デザイン思考を学ぶカリキュラムがある。本特集ではこのデザイン思考の中で使われているアイデア発想のテクニックを取り上げて徹底解説する。

まずは「行動観察」から始めよ

 デザイン思考の概略については、既に『[第4回]いま注目の「デザイン思考」の正体を暴いてしまおう』で触れた。ここではデザイン思考の要点のみ確認しておきたい。

 冒頭で述べたように、デザイン思考とは「イノベーションを生み出すために、卓越したデザイナーの思考法を活用すること」と定義できる。震源はアメリカのデザイン会社IDEO(アイディオ)であり、狭義にはIDEOが推進する手法がデザイン思考とも言える。

 デザイン思考では、(1)観察、(2)問題の定義、(3)解決策の創造、(4)アウトプットという大きく四つの手順を経て、世の中にイノベーションを送り込むことを目指す。

 デザイン思考ではこの過程の中で、アイデア発想に関連する各種テクニックを活用する。その中でも最初に実行するのが人間の行動を観察して、隠されたニーズを捉えることだ。この活動は「(1)観察」に該当するもので「行動観察」とも呼ぶ。

 そもそもデザイン思考では「人(有用性)」「技術(技術的実現性)」「ビジネス(経済的実現性/持続可能性)」の三要素を満足させてイノベーションを実現しようとする。しかし従来は「技術」や「ビジネス」が着目されるあまり、「人」への関心がおろそかになっていた。

 このような反省からデザイン思考では、まず「人」に着目し、その行動を観察することから、本当に有用な製品やサービスの在り方を考えようとする。実はあの経営学者ピーター・ドラッカーも同様の精神の持ち主だった。ピーター・ドラッカーはこう言ったものである。

ここで原則は、顧客はみな正しいとすることである。ほとんど例外なく、彼らの行動は合理的である。したがって、答えを想像してはならない。必ず、直接答えを得なければならない。
ピーター・ドラッカー他著『経営者に贈る5つの質問』(2009年、ダイヤモンド社)

 ドラッカーは顧客に着目し、そこから答えを得よ。答えを最初から用意してはいけないと言う。とはいえ、「あなたのニーズはなんですか」と顧客に直接尋ねても、まともな答えが返って来ないのがオチだろう。

 そもそも顧客自身も概して自分が欲するものを正確には理解していないものだ。しかし行動は正直で、こう使われるだろうと考えられた製品やサービスを、顧客は自分なりに工夫して利用する。そこに隠されたニーズが存在する。