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 「Silicon Valley is coming(シリコンバレーがやってくる)」――。米JPモルガン・チェースのジェームズ・ダイモンCEO(最高経営責任者)は2015年4月に送付した「株主への手紙」のなかで、スタートアップ企業が提供する金融サービスへの危機感を露わにした。米国の大手金融機関のトップの言葉は、テクノロジー発の新しい金融サービスFinTechの影響力を物語る。

 FinTechの波は日本にも押し寄せている。金融関連サービスに参入するスタートアップ企業が次々と誕生し、大量の顧客を抱えるサービスも出てきた。今まで静観を保ってきたように見えた銀行も一斉に動き出している。共栄と対立の構図が混じり合うFinTechをキーマンはいかに見ているのか。みずほフィナンシャルグループの阿部展久インキュベーションPT長に聞いた。

(聞き手は岡部 一詩=日経コンピュータ


みずほフィナンシャルグループの阿部展久インキュベーションPT長
みずほフィナンシャルグループの阿部展久インキュベーションPT長
1992年3月、大阪大学工学部卒、同年4月に現みずほ銀行に入行。2006年2月、みずほ銀行経営企画部調査役、2007年7月に同参事役。2012年4月、みずほフィナンシャルグループ(FG)経営企画部参事役。みずほ銀行長野支店支店長を経て、2015年7月、みずほFGインキュベーションPTのPT長に就任した。10年強にわたり個人向け商品・サービス開発を担当。顧客データを活用した信用リスク管理やデータベースマーケティング、インターネットやモバイル関連の商品・チャネル開発に従事した。(写真:陶山勉)
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国内外で新しい金融サービスが続々と生まれています。

 日本の金融サービスには独特の難しさがあります。これまで外資系の名だたる金融機関が国内のリテール事業に挑戦し、うまくいかなかった歴史がその証左でしょう。

 ただ、パラダイムシフトは確実に起きています。若者が初めて口座を開設する際、昔は近所にある銀行の支店に足を運んでいました。今ではネット経由だったりする。店舗数や立地の良さの勝負ではなくなったわけです。こうした動きを受け止め、対応を考える必要があります。

 我々が意識すべきは、ネット銀行というよりは、若者が圧倒的に支持するWeb系のプラットフォーム事業者かもしれません。

 若者の口座数を増やしたい場合、彼ら彼女らに銀行を認知してもらう強力な導線を持っているのは金融機関ではない。プラットフォーム事業者です。うまくコラボレーションできるかが鍵になるでしょう。10月に開始した無料通話アプリ「LINE」で残高照会できるサービスなどが一例です。

日本のFinTechでは異業種との対立ではなく、協業するケースが目立ちます。

 もちろんFinTech企業が我々の脅威になるケースも考えられます。プラットフォーム事業者自身が金融業に乗り出し、強烈な顧客基盤を持つ競合相手にある日突然変異することは往々にして起こり得る。

 ただしスタートアップ(新興)企業は、我々にはないテクノロジーやセンスなど、色々な要素を持っています。顧客のニーズが多様化し複雑化しているなか、活用させていただかない手はありません。自前にこだわっていては時間がかかりますから。

 一方、我々にもスタートアップ企業にはない財産があります。例えばみずほは、約2400万の個人顧客を抱えている。協業のメリットを感じてもらえるはずです。

 FinTechは大きなゲームチェンジだと考えています。私はこれをチャンスととらえ、生かしていきたい。みずほが先進的な企業だと認識してもらえれば、ビジネスや技術の“種”を持つ優良なスタートアップ企業が最初にドアをたたいてくれるようになるはずです。