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 2016年は破壊的なITが広がる。どれだけの速さで広がるかは断言できないが、動きは不可逆なもので逆らうことはできない。

 破壊的なITとは何か。ビジネスの常識を変えるITのことだ。

 「イノベーション」という言葉を世に広めた経済学者のシュンペーターは「創造的破壊」という言葉を使った。破壊的なITは、創造的破壊を企業にもたらすものと言える。

ネットの中で完結しない

 システムを使えば、ネットを使えば破壊的なITが誕生するわけではない。方程式がある。

 誰も把握してなかった大量のデータを集め、これを分析しながら新たな市場、ビジネスモデルを生み出す、ことだ。

 大量のデータ収集を可能にするのは大勢の人間を引きつける便利なサービス。スマートフォンに限らず通信機能やセンサーを備えた様々なモノから、膨大なデータがクラウドに流れ込む。

 流れ込んだ大量のデータを時には人工知能(AI)を用いながら分析し、ネットワークで利用者を結びつけながら動的に変わる最適解を探し続け、従来は不可能だった人、モノ、カネの流れを実現する。群衆としてのクラウド、一人ひとりの個人の力が最大限に生かされる。

 この時、現在の情報経路、物流経路、流通経路を前提とした需要と供給のメカニズムが崩れる。価格破壊は特徴の一つだ。

 破壊的なITは、ネットの中で完結しない。

 「シェアリングエコノミー(共有型経済)」、あるいは「オンデマンドエコノミー」という言葉を目にしたことのある方も多いだろう。企業ではなく社会全体に注目すると、破壊的なITがもたらす現象はこう表現できるかもしれない。

 2015年、米ウーバー・テクノロジーズ、米エアビーアンドビーといった企業が話題になった。ウーバーはタクシー産業を、エアビーアンドビーはホテルをはじめとした宿泊産業に構造変革をもたらしつつある。

 ウーバーは、スマートフォン向けのアプリによって、世界中から移動したいと考える人間と、ドライバーになって移動させようという人間を結びつける。通信機能に加えスマホが内蔵するGPS(全地球測位システム)が明らかにする場所の情報が、過去には不可能だったコストで快適な移動を可能にした。

 エアビーアンドビーは、世界各国で泊まりたい人間と、泊まる場所を提供できる人間を結び付け急成長している。利用できる国は190に、宿泊できる施設のリストは200万を超す。この規模の宿泊施設を提供できる企業は存在しない。世界中の利用者の動向を分析し、様々な要望は需要に応え、さらに宿泊希望者と設備の提供者を引きつける。

 サービスが拡大していけば、ウーバーは移動に、エアビーアンドビーは不動産に関わる産業全体に影響を及ぼす可能性がある。米国シリコンバレーでは、買い物代行サービスのインスタカート、フードデリバリーのドアダッシュといったサービスが広がる。買い物の仕方が一変するかもしれない。

 日本でも同様の動きは生まれている。小規模な印刷会社と提携し、設備の空き時間を使うことで実現した低価格の印刷サービスを提供するラクスルは好例だろう。同社は2015年12月に、トラック運送業者の空き時間に目を付けた、荷物配達サービスの「ハコベル」もスタートさせた。