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 「サービスの品質は日本勢が世界最高だと確信している。我々ほどきめの細かいサービスを提供している国はほかにない。この品質をもっと強く世界へアピールしていきたい」

 ここで言うサービスとはシステムズエンジニア(SE)が提供するシステム設計・開発・運用のそれを指す。発言者は富士通の秋草直之専務(当時)、発言した時期は1998年3月であった。

 1998年3月26日、富士通は秋草氏が6月に代表取締役社長に昇格する人事を内定し、それを受けて筆者は日経コンピュータ誌の1998年4月13日号「ニュースレポート」欄に秋草氏の発言を紹介する記事を書いた。冒頭の発言はその記事からの引用である。

 日本製ソフトウエアや日本の開発サービスの品質はいずれも高い、だから国際競争力がある、と主張していた人は秋草氏の他にもいた。筆者もそう思っており、社長交代記事の見出しに「サービス品質を世界にアピール」と書いた。

19年前の記事を読み直す

 だが、19年経って自分が書いた記事に出ている秋草氏の発言を読み直すと色々なことを考えてしまう。

 読者の皆様にも考えていただければと思い、日経コンピュータ1998年4月13日号の記事を再掲する。年号表記を4桁にして句読点の表記を直したほかは原文通りである。2017年の今、筆者が感じたことを括弧内に記してみた。

 まず、記事の見出しは次の通りである。

「サービス品質を世界にアピール」
富士通次期社長の秋草直之氏に聞く

 それでは本文を順に再掲していく。

 富士通は3月26日、秋草直之専務が代表取締役社長に昇格する人事を内定した。6月下旬の取締役会で正式決定する。秋草専務は本誌記者に、「ソフト/サービス事業で何度も修羅場をくぐってきた。この経験を生かし、ハードや半導体・通信についても、決めるべきことを決める」などと語った。

 ここまでが前文であり、その後は秋草氏との一問一答が続く。

 秋草専務を後継者に選んだ理由として、関沢義社長(取締役会長に就任予定)は「“腕力”、すなわち問題があったときに何が大事かを見きわめて、あつれきがあっても解決するまでやり抜く力がある」と説明した。それほど多くの問題に直面してきたのか。

 入社して37年たつが、事業の成功体験はほとんどない。儲からないソフト/サービス事業を担当して、どう組織を作るか、人を育てるか、どうやってコストダウンするか、と悪戦苦闘してきた。特にお客様のシステム開発を請け負う事業では、何度となく修羅場をくぐり、何十億円という単位でお客様や会社に迷惑をかけてきた。

 苦労したおかげで、ちょっとやそっとのことでは驚かない。経営とは「今、何に投資するか」を判断することだ。通信や半導体の事業はよく知らない。だが、腹は座っているつもりなので、しっかり決めていけると思う。

 「何十億円という単位でお客様や会社に迷惑をかけてきた」という発言を読み、「けしからん」と怒る人がいるかもしれない。インターネットを通じて発言があっという間に広がる今、社長就任会見でこんなことを言ったら叩かれるだろう。だが、秋草氏はこういう本音を悪びれずにあっさり言う人で、コンピュータ業界の記者たちの間で人気があった。

 ソフト/サービスはいまだに、あまり儲かっていないのでは。

 国内については、利益面でも自慢できるところまで来たと自負している。もちろん満足しているわけではないが。一方、サービスの品質は日本勢が世界最高だと確信している。我々ほどきめの細かいサービスを提供している国はほかにない。この品質をもっと強く世界へアピールしていきたい。ただし、日本のやり方は技術者に依存しているところがあり、米国のシステマチックなやり方を見習う必要もある。

 確かに、ハイリスク・ハイリターンのハードや半導体事業に比べ、サービス事業はローリスク・ローリターンだ。それをいかにうまく展開していくか、各社が知恵を絞っている。人材育成、情報インフラの整備、外部との提携など、他社に後れを取ることなく、サービス体制をきっちりさせていく。

 「我々ほどきめの細かいサービスを提供している国はほかにない」という一文は今読むと表現がおかしい。正しくは「これほどきめの細かいサービスが提供されている国はほかにない」あるいは「我々ほどきめの細かいサービスを提供している企業はほかにない」であろう。

 もう一つ、「日本のやり方は技術者に依存しているところがあり、米国のシステマチックなやり方を見習う必要もある」の下りは自分で書いておきながら今読むと分かるようで分からない。日本は白紙の状態からソフトを手作りしていく人海戦術をとっているが、米国はパッケージソフトをうまく使いつつプロジェクトマネジメントをしっかりしている、という意味だろうか。