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 日経ビジネス1969年10月号に掲載された記事『日本のソフトウエアはここまで来た』を読んで思ったことを引き続き書く。この記事を知った経緯については『1969年、丸ノ内に「ソフトウエアの工業地帯」があった』を参照いただきたい。

 『日本のソフトウエアはここまで来た』は5ページと3分の2ページあり、それなりに長い。ソフトウエアを巡る動向は重要だと創刊当時の日経ビジネス編集部は判断したわけだ。

 なにより「季節感」があった。季節感は新聞や雑誌の業界用語で、ある主題を取り上げる際の根拠ないし前提を指す。「この記事を今書くべき、その理由はこうだ」と言うときの「こうだ」が季節感に当たる。

 例えば編集部で次のようなやり取りがされる。記者が「ソフトウエア技術者の労働環境を調べて特集記事を書きたい」と提案する。編集長が「季節感はどうか」と聞く。記者が「派遣法の改正時期であり、労働環境の変化が見込まれる」と答える。デスク(記者の原稿を査読する先輩記者)が「政府が時短について指針を出すらしい。特集を書くには良い時期では」と口添えする。編集長が了承すると記者は本格的な取材に動き出す。

 『日本のソフトウエアはここまで来た』という記事の季節感はIBMのアンバンドリング方針の発表であった。記事に次の一節がある。

 「この6月、米国IBM社がソフト・ハードの料金分離を発表し、米国内はもちろん、世界中の電算機業界に大きなショックを与えた。分離の表面上の理由は、同社を追撃しているコントロール・データ社から『IBMはユーザーに大量のソフトウエアを無料で提供し、公正な販売競争条件をそこなっている』と独禁法違反の訴訟がおこされたため。だが内実は、IBM自体が、かねて負担の大きいソフトウエア部分の有料化をねらっていて、訴訟をきっかけに念願を果たしたもの。米国のユーザーからは、実質的な値上げだと不評を買っている」

 「電算機業界」とか「同社を追撃しているコントロール・データ社」という表記を読むと隔世の感があるがそれはともかく、「この6月」とは1969年6月を指す。電算機(ハードウエア)の料金(レンタル料)とは別にソフトウエアの料金を徴収するとIBMは宣言した。

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