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 私が子供の頃から通っている理髪店の店主は、武道に通じた方で空手の有段者でもあります。私が大学生の時、その店主に誘われて空手道場にお邪魔したことがあります。そこでその店主の武道の先生にお目にかかりました。

 私の記憶では、その時の先生の年齢は70歳前後だったと思います。その先生が私に棒切れを渡すと、「この棒で、どこでもよいから思い切って私に攻撃してきなさい」と言われました。武道の先生とはいえ年配の方ですので、もしケガでもされたら大変だと思い、私は少し遠慮がちに棒を振り下ろしました。

 その最初の一打はあっさりと避けられました。遠慮がちにとはいえちゃんと狙って振り下ろしたにもかかわらず、道着をかすめることすらできません。次の一打からは、私も本気になりました。しかし、棒をあらゆる角度から何度も振り下ろしたのに、先生はすべて見事に避けたのです。

 運動神経や反射神経といった俊敏な動きは、どう考えても若い私の方が有利なはず。合点がいかない私は「どうして避けられるのですか?」と尋ねずにはいられませんでした。

「素人の次の動作は予想できる」

 先生の答えは実に明確なものでした。「素人はアクションが大きいので次の動作が予想できる。あなたの場合、目が次に打ち込む場所を見ているので予想できるのです」。

 この「素人はアクションが大きい」という傾向は、車の運転でも同じです。私は若い頃、カート・自動車のレースに参加していました。車はハンドル、ブレーキ、アクセル操作など、いわば車に対して「刺激」を与えている時が最も不安定な状態になります。そのため、レース中においては、すべての操作を短時間かつソフトに、いかに少ないアクションでこなせるかが求められます。

 しかし、自動車免許を取り立ての初心者の運転はどうでしょうか?皆さんも助手席に乗っているとき、ハンドルやブレーキ、アクセル操作などが頻繁でアクションも大きいので、思わず足を踏ん張ってしまった経験があるかと思います。初心者の運転はドライバー自身が運転に不安を持っているため、要・不要に関わらずアクションが多く、そして大きなアクションになりがちなのです。