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 「海外居住者が日本国内の自分の口座に送金できない」――。2016年2月にネットでこんな都市伝説が広がった。マイナンバー制度がスタートした2016年1月以降、海外に送金をするには金融機関にマイナンバーの提出が必要になった。実はインターネット銀行のサービスの多くは国内居住者のみを対象にしていて、海外転居すれば届け出が必要になるという前提がある。

内閣府番号制度担当室と金融庁が異例の公表

 内閣府番号制度担当室と金融庁は2016年2月22日、異例の公表(PDF)をした。海外に住んでいる人がマイナンバー(個人番号)を持たないことだけが理由で、「金融機関が国内の預貯金口座への送金や、送金された金銭の払い出しを拒否することはない」というものだ。

 マイナンバーの通知カードは、国内に住んでいて住民票がある全ての人に送られる。しかし海外に住んでいると、日本人であってもマイナンバーは付番されない。つまり海外に住む日本人はマイナンバーを持たない。海外在住者に対して、金融機関がマイナンバーがないことを理由にサービスを拒否することはないとしている。

 では、なぜ海外居住者が日本国内の自分の口座に送金できないのだろうか。実は、国内に住んでいた人が海外に転居しているのに、金融機関に対して住所が海外にあることを正式に届け出ていない実態が背景にある。そもそも金融機関のサービスが、国内に住んでいる人だけを対象にしているという契約条件を見落としている恐れが高い。

 例えばあるインターネット銀行は、口座開設の条件として「日本国内に居住されている個人」に限定している。さらに、そのうえで海外送金の申し込み時には「個人番号カードまたは通知カードのコピー」を求めていて、マイナンバーに関する書類の提出が完了するまでは、「海外送金サービスはご利用いただけません」と明記している。

 つまり、海外居住者が日本国内の自分の口座に送金できないというのは、マイナンバー制度が理由なのではない。内閣府番号制度担当室は「これまで本来きちんと手続きをしていただかなければいけなかったことが、マイナンバー制度で浮かび上がった」と説明する。

証券口座が凍結される?

 「個人情報保護委員会」は2016年3月に公表した「転ばぬ先の事例集」(PDF)で、証券口座がある証券会社から「マイナンバーの提供がなければ口座を凍結する」と言われたというトラブル事例を紹介している。一種の都市伝説だが、これも法的な根拠はない。