ビーコン技術のこれから
2014年から2015年にかけてPhysical Webのようなビジョンが登場し、Eddystoneのような規格が整備されていった。2016年になってEddystone-EIDのような新しい規格も登場するなど、引き続き進化している。Eddystoneビーコンを開発するためのファームウエア用のライブラリーなども登場し、開発環境も充実してきている。国内はまだ少ないものの、これらの仕様に合わせた市販製品も徐々に増えている。今後も増えていくだろう。
位置情報ゲームであるポケモンGOが社会現象になったのも記憶に新しい。これはGPSを使ったものではあるが、このような位置情報に基づくリワードを利用したサービスにおいて、ビーコンが使われるケースも今後は出てくるだろう。
Androidのバージョンについての話をすると、4.3からBLEのCentral、5からPeripheralとしての機能を利用できる。iOSではかなり前から両方ともが使えるが、古いバージョンのAndroidのサポートを考えると、ビーコンの利用は難しいところがあった。しかし、例えば、ポケモンGOがAndroid4.4以降をサポート対象としているように、BLE利用可能端末を前提としてもよい時代がやってきている。
このように、開発環境、ユーザー環境、サービス需要、様々な側面から下地が整ってきていると言えるだろう。
ソーシャルネットワークへの応用
FacebookやTwitterが流行した際、ソーシャルグラフという言葉が注目を集めた。これはユーザー間をつなぐグラフ型のサービスである。
特定メンバー間でのプライベート空間でのチャットを楽しむLINEのようなサービスが最近は流行している。こちらはルーム型と呼んでもよいだろう。
今回のようなサービスはグラフ型やルーム型とは違う、言ってみればロビー型のサービスだ。会議室だけでなく、イベント会場など、一時的に人が集まり出会いが発生するような場はたくさんある。ビーコンを利用したり、あるいはその他のIoT関連の技術を応用することで、そのような場所にもデジタルのサービスを導入することが可能となってきている。
イベントをオーガナイズするためのサービスや、カレンダーなどのスケジューリングツールなど、人が集まる場を設定するためのサービスはたくさん存在する。FacebookやLINEのように、知り合った後でコミュニケーションを深めるサービスは既に充実している。しかし、その中間である出会いの場が、今までは技術のミッシングリンクになっていた。
今後、この隙間を埋めていく競争が始まるのではないだろうか。
サービス設計は次の時代へ
SIMやWi-Fiと連動したIoTデバイスもよく見かけるようになってきた。今回紹介したビーコンもそうだが、これらは現実世界に仕掛けられたサービスのフックとなる。
どこで仕掛けるのか、イベントのトリガーはハードウエアボタンなのか近接検知なのか、ユーザーにそれを伝えるのはプッシュ通知なのか、あるいは適切な場所にデジタルサイネージを置くのか、など今までのサービスの枠には収まらない新しいタイプのUI/UXの設計に関する知見が必要になってくるはずだ。最近注目を集めるBotサービスのプラットフォームを利用する手もあるだろう。
こうした新しい時代のサービス設計を考えていくに当たり、今回の特集が参考になれば幸いである。
リクルートテクノロジーズ ITソリューション統括部 アドバンスドテクノロジーラボ