OpenStackは思っているよりハードルは高くありません

ITセミナー講師を務める坂田 玲子さんは、日頃の業務にフリーソフトをフル活用している。セミナーの受講者が使うネットワーク環境の整備や、社内の技術者が使う検証環境の構築に、フリーソフトは欠かせないという。
中でも坂田さんイチオシのフリーソフトが、クラウド基盤を構築する「OpenStack」だ。サーバーを稼働させる仮想マシンなどのITインフラをネットワーク経由で提供するIaaS▼のクラウド環境を構築できる。仮想マシンやネットワーク、外部ストレージを管理する機能など、様々な機能を持つ複数のソフトウエア部品(コンポーネント)で構成されている。
ネットワンシステムズでは、従業員が演習などに使うセルフラボを用意している。このセルフラボこそ、坂田さんが所属するネットワークアカデミーチームがOpenStackで構築したものだ。従業員は、画面の案内に沿って必要な項目を選択すると、わずか1~2分でネットワークに接続されたサーバー環境やルーター環境を作れる▼。構築した環境で、機器の検証を行う。
坂田さんはOpenStackのメリットとして、「ユーザーにとってはすぐに環境を構築できること。運用者にとっては、問題点をインターネットで検索すれば解決できること」を挙げる。「自分が困っているところはみんなも困っているようで、検索すればすぐ見つかりました」(坂田さん)。従業員からは、「忙しい中で、時間をかけずに環境が作れて助かった」「簡単に使えた」といった声が寄せられているという。
運用者にとって、必要な情報が簡単に入手できるかどうかは、フリーソフトを選ぶ際の大きなポイントとなる。情報が豊富なOpenStackは、「思っているよりハードルは高くないんですよ」と坂田さんは話す。
Infrastructure as a Serviceの略。
OpenStackのオリジナルのユーザーインタフェース(UI)が従業員にとっては少し使いづらかったため、独自のUIを社内の別チームに開発してもらった。これにより必要な項目を選びやすくなった。
輻輳を作り出して勉強に活用
ネットワーク技術の勉強にもフリーソフトは大いに活用できる。坂田さんがQoS▼の講義に利用するのが、パケットジェネレーターソフトの「ipsendwin」。プロトコルやペイロード長を指定して、テスト用のネットワークトラフィックを生成できる。
ネットワーク機器でQoS機能を設定すると、パケットに優先度を付けて、任意のパケットを優先的に転送できる。ただし、実際にQoSが効いているかどうかは、ネットワークが混み合いパケットが流れにくくなる輻輳が発生した状況でなければ確認しにくい。
そこで坂田さんは、ipsendwinを使ってパケットを生成し、帯域幅いっぱいのトラフィックを発生させる。こうしてわざと輻輳を起こした状態で通信し、QoSの設定がきちんと反映されているかどうかをコマンドで確認する。「ipsendwinは昔ながらの画面なのですが、使い勝手はとてもいいですよ」(坂田さん)。
なお、ipsendwinはWindows用のソフトなので、Linuxマシンで使うなら同様の機能を持つ「Ostinato」がオススメとのことだ。
Quality of Serviceの略。帯域制御や優先制御などを指す。