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 英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)の決定やドナルド・トランプ米大統領就任など、世界的な政治の不安定さに引きずられ、経済の不透明さが増してきた。それがITマーケットにも及び、多くの企業がIT投資に関して様子を見る姿勢を強めているようだ。このほど発表された企業のIT投資動向にも、それが反映している。

 まず、毎年1月に米調査会社ガートナーが発表する世界のIT支出動向から見ていこう。2017年版は2016年から1週間早く1月12日に発表された。おそらく1月20日のトランプ大統領就任式とのバッティングを避けたのだと思われる。かつてニューヨークタイムズ紙が「ガートナーの声は“神の声”」だとし、ユーザーや業界への影響力の強さを指摘した。そのガートナーでさえ、ITを目の敵のように振る舞うトランプ氏には多少の遠慮があったのかも知れない。

 トランプ氏は製造業の米国回帰を強調している。しかし、現実を直視すれば、技術によるイノベーションの結果として産み出されるジョブは、ホワイトカラーではないし、ブルーカラーでもない。新しい「ニューカラー」とでも言えるジョブであるはずだ。それが米国の産業、経済を支える人的資源であり、雇用創出のカギである。つまり、ITなしでは始まらない先端に米国は位置しているわけで、IT、とりわけシリコンバレーとの確執解消に向かうのか、そうでないのか、まずは新政権誕生以降の政策内容に着目したい。

2016年の年初予測を3度も修正

 さて、ガートナーは年初の予測を四半期ごとに見直している。2016年は4月、7月、そして10月の3回に修正をかけた。

 2016年1月、ガートナーは2016年の世界のICT支出を0.6%増の3兆5360億ドルと予想した。2015年がマイナス5.8%成長だったから、2016年は6.4ポイントの大幅な回復を見込んでいた。ガートナーはIT支出項目を、データセンター(サーバー、ストレージ、ネットワーク機器)、企業向けソフトウエア、デバイス(PC&モバイル機器、プリンター)、ITサービス、通信サービスの6カテゴリーに分けている。IT支出に「IT部門人件費」の項目がないので、ガートナーのIT支出金額は「IT市場に投下される金額」とみていい。

 4月には、2016年の見通しを0.5%減とし、1月の0.6%増から一転してマイナス成長に修正した。理由は為替相場の変動だ。ソフトウエアの伸び率を上方修正した以外は下方修正した。特にデバイスの下方修正幅(▲1.9%→▲3.7%)が大きい。スマートフォンが世界的に見て飽和状態に近づきつつあるためと、米アップルの不振を理由に挙げていた。ITサービスは日本とインドの見通しが明るいとコメントした。

 7月の修正では、2016年を0.3%減のほぼ横ばいの見通しと修正した。ただし、英国のEU離脱を考慮しないと仮定した場合と注釈を付けた。英国のEU離脱を考慮した場合は、企業マインドの悪化と価格の上昇が英国そして西欧、ひいては世界のIT支出に影響を与えるだろうと、先行きの不安を明らかにした。