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 春の珍事と言うべきか、はたまた当然の結果と見るべきか。富士通の株価が急上昇し、2年ぶりの高値を付けた。富士通は4月28日の取引終了後に前年度比5%の減収、2%増益の2016年度連結決算を報告したが、その後の20日間で株価が16%上昇し、5月16日には804円の高値を付けたのである。

 富士通のある幹部社員は「仲間内で話しても高騰の理由が分からない。2016年度の業績も特に株高に結び付く要素も無さそうだし、グループ企業の周りを見ても懸案の中国レノボへのPC事業売却が一向に進展しない。破談の見込みさえ出始めた。これじゃ新聞の株式欄で富士通の1行上にいるNECに申し訳ない」と苦笑いだ。ちなみにNECの株価は同期間で1%マイナスだった。

 確かに富士通の主要ビジネスの2016年度実績をざっと見ても、2015年度に比べて特に株価上昇に結び付くような要因は見当たらない(表1)。株価に関連しそうな要因を強いて上げると、富士通独自のSPARC/Solarisを搭載するUNIXサーバーが31%も売り上げを減らし、80億円を切ったのが目立つが、これは株価を下げる要素だろう。

表1●富士通の主要ビジネス売上成長率
表1●富士通の主要ビジネス売上成長率
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 PRIMEQUESTやPRIMERGY、ストレージシステム、そして基本ソフト(OS)を合計した「システム」の売り上げは1%増の2000億円強に留まる。同じシステム括りで、19%も減らしている米IBMの2016年度(1〜12月)売り上げよりはずっと健全ではあるが、売上高自体はIBMのほうが4倍も多い。懸案のPCは1%増で、モバイルフォンが16%減。合計して6%減の4000億円弱になるが、これも株価が高まる要素とは考えにくい。

 サービス関連が注目だが、4000億円クラスのシステムインテグレーション(SI)事業の伸び率は2015年度を大きく下回っている。一方、4500億円クラスのアウトソーシングビジネスの伸び率が増えたが、わずか2ポイントだ。

 K5と名付けたパブリッククラウドサービスの伸び率が15%と高い。しかしこれも、2017年第1四半期(1〜3月)の実績で米アマゾンが前年同期比43%増、米マイクロソフトが93%増、IBMが59%増、米オラクルが62%増、独SAPが34%増など、世界のクラウドサービス競合と比較すると迫力に欠ける。