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 それってブラック職場じゃないのか――。IT部門が消滅し、一人残されたIT担当者の奮闘を描いた「ひとり情シス顛末記」。この実話の当事者である著者が、読者から質問に答える。今回は、ひとり情シスの労働環境だ。連載を読んだ読者からは、「有給休暇は取れているのか」「残業過多ではないか」など疑問が寄せられているが、成瀬氏はどう考えるのか。

読者の質問・批判

 「ひとり情シスは中堅企業などにとって現実解」と著者の成瀬氏は言うが、連載を読んでの率直な印象で言うと、ひとり情シスはやはり“ブラック職場”なのではないか。仮想化しているとはいえ200台以上のサーバーを抱え、業務システムも自前で作るとなると、成瀬氏はほとんど休めないと思う。病気の場合を除いて有給休暇を取るのが難しいはずだし、長時間労働を強いられているのではないかと危惧する。

 「休暇は取れているのか」「残業過多ではないか」といった質問にも答えよう。私一人による運営となって数年が経過したが、まずは今の私の状況から説明する。最近、新たにエンジニアを一人迎えることで、ひとり情シス状態から脱却したこともあり、人間らしい生活ができている。

 残業もあるが、やっても労使で合意した三六(サブロク)協定の範囲内である。計画停電対応や業務システムの年度更新の時期以外では、休日出勤することも少なくなってきた。週2日は定時退社日があるし、有給休暇や夏休み、冬休み、ゴールデンウィークなどの長期休暇もきちんととれている。ただし、何かあった時に備えて自宅から対応できる環境は整えている。それも必要になるときは1年に1回あるかないかといった状況である。

 国も労働時間の適正化などを進めていることもあり、親会社は長時間労働の抑制に動いており、それが子会社にも影響している。その波が来る前にある程度、ひとり情シスの運営の省力化を進めておいてよかった。省力化する前に労働時間短縮などの波が来たら、時間が足らず省力化の歩みが遅くなっていたかもしれない。

1分で分かる「ひとり情シス顛末記」あらすじ
  • ピーク時には10人いたIT部門が消滅、著者も他部署に異動になり、居候状態で200台のサーバーを一人で管理することに
  • 企業のIT環境がこんな状況では良くないと考えた著者は、IT部門の復活を期して経営への提言を行おうとするが、情報は経営に上がらず、二度の直訴も失敗
  • 「ひとり情シスでやる」と意を決した著者は、まず老朽化した200台のサーバーを仮想化して管理可能状態にした。
  • 続いて、ITベンダーに丸投げしていた基幹システムのうち、データベースの管理を取り戻し、データガバナンスを確立。
  • さらに業務部門の要望に応え、業務システムの内製化にも取り組み、基幹システムのデータや業務部門に埋もれているデータを有効活用できるようにするとともに、データの一元管理をさらに推進した。
  • こうした取り組みにもかかわらず、ITや著者に対する意識や評価は変わらなかった。
  • 人間ドックで病気が発覚、著者は手術と入院で3カ月間にわたり出社できない事態になったが、社内のシステムは止まることなく、業務に影響を及ぼすような大事に至らなかった。
  • ただ、ひとり情シスのリスクを実感した会社は、IT担当者を新たにアサインし、長かったひとり情シス状態から脱却することになった。

 実は、他部門の居候の身で請求書を徹夜で作っていたころが一番大変だった。休出や残業、徹夜もあり、倉庫で段ボールに囲まれながら仮眠したことを思い出す。と言っても、皆さんが思っているほど悲惨な状態ではない。もう時効だから言うが、昔ITベンダーで開発をしていたころには、標準労働時間以上の超勤をしていた時もあり、マイ寝袋も常設していた。当時はそんな時代だったが、いまだにそれをやっているITベンダーがあると聞く。残念なことである。