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 ユーザー企業の内製力が強化され、ちょっとしたことなら内製で対応できるようになれば、ITベンダーへの過剰な依存も解消され適正な状態に向かうだろう。少人数運営のIT部門をサポートするITサービスも充実するだろうし、クラウドの進化も後押しになる。それによりユーザー企業のIT部門の省力運営が容易になり、特に中堅中小企業のIT活用の底上げにつながると期待する。

 そうなれば、経営層のIT部門に対する理解も少しは深まってくると思われる。IT環境の整備が進み、IT部員の労働環境の適正化や柔軟な働き方も可能になる。それは優秀な人材の発掘など人材確保面でもプラスに働く。ユーザー企業のエンジニアは人気の職種となり、地方のIT人材活用や地元企業の活性化につながれば、地方創生にも少しは貢献できるかもしれない。

「独立」はエンジニアが身を守る手段

 何でも自分でやる多能工エンジニアになれば、独立のハードルも下がる。大企業の社員ですら将来を安心できない時代に、独立は自分の身の守り方でもある。そう考えるエンジニアが増えれば、他国に比べて起業率が低い日本の活性化にもつながり、イノベーションが起きやすくなるかもしれない。

 中堅中小企業だけでなく、大企業もIT環境の省力運営に乗り出すだろう。同じやり方ではないと思うが、エンジニアの多能工化へのシフトが進むと予想する。担当範囲が広い多能工エンジニアは、大企業、中堅中小企業、業種が全く違っていても通用する人材である。エンジニアにとっては選択肢の幅が広がるから、自分の未来図に近い職場を探せばよい(図2)。ITゼネコンのピラミッドの中で苦労している優秀なエンジニアは、一気に発注側(ユーザー企業)に行けるチャンスでもある、という夢のような話だ。

図2●エンジニアにとってキャリアアップの選択肢が広がる
図2●エンジニアにとってキャリアアップの選択肢が広がる
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 そうなると、大学や専門学校などの教育機関も、多能工エンジニアの育成学科や研修コースを設けるかもしれない。国も、プログラミング教育の義務化と連携させて、政策として推進すると都合が良いと考えても不思議ではない。

 若者は高待遇でやりがいのある多能工エンジニアを目指すだろう。そうなれば全体のレベルも上がる。かつて、低評価で「3K、5Kのハズレ仕事」などと言われていたひとり情シスの苦労は過去の話になる。先進国最低の労働生産性が徐々に改善され、日本の製造業の潜在能力が更に発揮され日本全体が潤うだろう。そして私は、安心して老後を暮らせるというシナリオだ。