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 某製造業の現役IT担当者がIT部門消滅の実体験を基に、新たなIT部門の在り方を提起する連載の第8回。今回から、これまで記してきた著者の「ひとり情シス」の経験を踏まえ、企業のエンジニア、そしてIT部門の新たな可能性について述べる。ひとり情シスをネガティブに捉えなければ、「ソロインテグレータ」、つまり「何でもやれるエンジニア」への道が開ける。

 IT部門の消滅後、200台のサーバーを抱え、ひとり情シスとして運営してきた私の話を、読者の皆さんはどのように捉えたのだろう。一人でやらされた不幸話に見えたか、それとも自慢話に聞こえただろうか。捉え方は人それぞれだが、連載第1回の印象と今の印象は違うのではないか。そして「この程度なら誰でもできる」「大したことしてないな」と思うことが一つや二つはあったはずだ。

 私はスーパーマンでもなければ天才でもない。何も難しい事はしておらず、普通のエンジニアが、普通のことをしてきただけだ。それでも普通にさえできれば、中堅規模の企業のIT環境の立て直しなら一人でできてしまうぐらい、技術が進歩しているのである。

 IT部門の衰退が問題視されるようになってから、どのくらい経つだろうか。問題を指摘する人は以前より多くなったと思うが、期待している解決策はいつまで経っても出てこない。今回、私はそれを待ちきれずに、自分なりの答えを出してしまった。

 その間もIT部門は衰退を続けていると言われているが、なかなか絶滅しない。いつまで閉店セールを続けているのだろう。本当に要らないのであれば、私の会社のようにさっさと消滅させられてしまうはずなのに、なぜそれができないのか。簡単な話だ。企業にとってITは必要であり、IT部門を消滅させたら何が起きるか分からないからである。と言っても、必要と思われているのは情報システムであり、IT部門やIT要員は絶対に必要だとは思われていない。そこが問題なのである。

 IT要員は本来、重要なシステムを支える大切な人材のはずだが、多くの企業でIT要員は残念な扱いをされている。ボトムアップで構築されたシステムは業務と複雑に絡み合う。経営者は手も足も出せないため、IT部門の言いなりになるしかなく、経営者はそれが気に入らないのかもしれない。もしそうだとしたら、重要なシステムを支えるIT要員が残念な扱いをされる、という矛盾した状態の説明もつく。しかし、そんなどっちつかずの状態は、コストがかかる割にメリットが少ないことに、経営者は気づいてほしい。

 経営者がIT部門の現状を把握していなければ、消滅させたときに何が起きるか予想できない。そこで多くの企業で、IT部門が“生かさず殺さず”の状態で放置されるのではないか。一方、私の会社ではIT部門が消滅する直前には、すでに私は一人で数十台のサーバーを担当していた。そういう状況にあったからこそ「IT部門を廃止して一人に担当させても、システムは維持できる」との判断があったのかもしれない。