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現場の愚痴を聞き、経営層に怒られて学ぶ

 居候として部門を転々とすることで、いろんな立場で物事を見ることができた。そして思ったことは、それぞれの立場では、言っていることや、やっていることは妥当であるということである。第三者からは「何でそんなことやってるの」「こうすればいいじゃん」と思えても、実際にその立場になってみると「なるほど、そういうことか」と納得し、私も同じ立場だったら同じことをしていたと思うことも多かった(図1)。

図1●相手の立場にならないと、第三者では分からない
図1●相手の立場にならないと、第三者では分からない
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 実は転々としながら勉強させてもらっていたのである。現場に溶け込まないと得られない「実は…」の話こそに価値があり、“愚痴聞き屋”となることもよくあった。それができたのは下っ端だったからだろう。現場には部下が上司には言えない事がたくさんあり、そこにシステム化の多くのヒントが隠されている。居候時代の貴重な経験が、その後の業務システムの開発や全体最適の取り組みにつながることになった。

 経営層と接する機会も、よい勉強になった。たいていはIT投資のお願いのため、「なんでこんなに高いんだ」「他に案はないのか」などと毎回責められるが、話の中の端々に本音と建前が見え隠れしている。偉そうな事を言える立場ではないが、経営層も”いろいろ”大変なのである。経営者はITに理解が無いわけではなく、ITを詳しく分からないため判断できないだけだ、というのが私の見立てである。

 それぞれの企業には、長い時間をかけて形成された制度や仕組み、雇用環境、そして過去の経緯や社内の政治的な事情がある。IT要員やIT部門は、各部門や経営層と十分にコミュニケーションを取って、その辺りのことを十分に理解した上で、IT投資を提案したり、業務システムを構築・運用したりしないと、特に日本企業では十分な役割を果たせない。サーバールームに閉じこもり、機械の面倒を見ているだけでは誰からも評価されず、「IT部門など無用」と思われてしまうのである。

 それが分かっていたとしても、社内や部内のしがらみなどを引きずったIT部門では、IT要員はそのような動き方ができない。だが、IT部門が消滅したことで、過去のしがらみも全て消えた。一人でいろんなことを回さなければいけないから、各部門の人や経営層とコミュニケーションを取るほか道は無く、他部門への居候経験も生きた。ひとり情シス(私の言葉では「ソロインテグレータ」)という一見無力な体制こそが、解決の糸口を握っていたわけだ。