PR

 守備範囲と役割の拡大がキャリアパスの一つとして認知されれば、サラリーマンであっても生涯エンジニアとして活躍できる可能性が高くなる。それはエンジニア個人だけでなく、企業にとってもメリットがある。今後、少子高齢化やエンジニア不足が進み、人口減少に伴い労働生産性を高める必要があることを考えると、中堅中小企業だけでなく大企業でも多能工の需要は確実に増えるはずである。

 システムの内製化はハードルが高いかもしれないが、一人でも内製できる人材がいれば、結果的に企業の内製化は進むはずである。私の会社もITベンダーへ丸投げの状態だったが、たった一人で内製化を進めることになった(と言っても一人しかいないが)。大所帯のIT部門でも、何でもやる多能工を一人でも入れることで、周囲に波及する可能性は十分にある。「一人でやる」ことが目的ではなく、誰もが「何でもやれるようになる」ことが目的である。

 よく誤解されることがある。私は何でもやるが、何でも知っているわけではない。逆に知らないことのほうが多い。問題を解決する際に足りない知識や技術はインターネットなどから学び、試行錯誤しているのである。つまり重要なのは、調べる力と学ぼうとする力である。

 もちろん得意な技術はあるので、それで解決できるところは、特別な理由がない限り新しい技術を使わない。個人的な興味で新たな技術に挑戦することもあるが、そんなときはたいてい保険をかけるようにしている。業務システム構築に必要な技術は多いが、個々の技術で必要な知識はそれほど多くない。その基本さえ習得できれば、後は単なる応用でしかないので、足りない部分は必要になったときに調べればよい。

 多くのエンジニアは臆病になっている。臆病ゆえに、失敗を恐れ、壁をつくり、結果的に自分の価値を下げることになっている。非常にもったいない話である。企業もエンジニアという人材が不足しているのではなく、ただ管理職にするだけで生かせていないのだ(図3)。経営者が把握していないのは、どうやらシステムだけではないようだ。

図3●企業はどちらのエンジニアを必要としているか
図3●企業はどちらのエンジニアを必要としているか
[画像のクリックで拡大表示]

 協力者もおらず、前例がなく試行錯誤を繰り返したので、私はIT環境の立て直しに10年もかかってしまった。しかし、その経験を活用して、それに続くエンジニアがいたとしたら、同じことが数年でできると思う。規模が小さければもっと短い時間で実現できるかもしれない。ぜひとも現場のエンジニアには立ち上がってほしい。それは自分のためでもある。私は頑張る人を応援したい。

成瀬 雅光(なるせ まさみつ)
1968年生まれ。大学卒業後、大手POSシステム開発ベンダーに入社。海外商品開発部でUNIXとC言語を叩き込まれる。大規模システム開発で設計やプログラミング、精鋭火消しチームの下っ端で問題解決手法や効率的な仕事のやり方を学ぶ。受け身で担当範囲の狭い大規模システム開発では満足できずユーザー企業のIT部門に転職。IT部門の消滅後、ひとりで立て直した経験は、コストとIT活用の両立で悩む中堅中小企業を救うと信じ、普及に努めている。