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 携帯電話大手3社が大きな節目を迎えている。総務省は2016年4月に「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」の運用を始め、不適切な販売の取り締まりを強化。大手3社は行政指導ばかりか、厳重注意に報告徴求命令が付いた行政処分まで受けた。従来のキャッシュバックに頼った新規顧客の取り込みはもはや不可能となり、顧客の流動性が一気に低下した。代わりに「格安スマホ」に代表されるMVNO(仮想移動体通信事業者)がじわじわと勢力を拡大している。

 この兆候はMNP(モバイル番号ポータビリティー)市場にも表れている。NTTドコモは2016年12月、MNPの転入超過数が単月で過去最高を記録した。2016年10~12月期の四半期ベースでも過去最高の4万6000件の転入超過となったものの、実はMVNOの拡大による恩恵が大きい。MVNOの多くはNTTドコモ回線を活用しており、KDDI(au)やソフトバンクのユーザーがMVNOに乗り換えると、数字上はNTTドコモへの転出として計上される。大手3社間の乗り換えが急速に縮小し、MVNOがMNP市場を大きく左右するようになった。

MVNO促進に突き進む総務省

 MVNOの拡大は今後さらに拍車がかかる可能性が高い。総務省が2017年1月に新たに策定した「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」により、MVNOへの移行障壁が大幅に低下するからだ。具体的には、(1)SIMロック解除までの期間短縮、(2)解約時に原則SIMロック解除、(3)MVNO向けのSIMロック廃止、(4)期間限定の販売奨励金の適正化、(5)端末購入における合理的な額の負担の明確化――などである。

図●携帯電話市場の現在の競争状況
図●携帯電話市場の現在の競争状況
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 (1)のSIMロック解除までの期間は、これまで6カ月程度だったが、端末を割賦払いで購入した場合は「100日程度以下」(2017年8月1日以降)、一括払いで購入した場合は「支払いを確認できるまでの期間」(2017年12月1日以降)となる。(2)の解約時に原則SIMロック解除も、MVNOへの移行促進と同時に中古端末市場の活性化につながる。

 (3)のMVNO向けのSIMロックは、NTTドコモ回線を活用したMVNOではNTTドコモの既存端末をそのまま流用できるが、KDDIやソフトバンク回線を活用したMVNOでは一部を除き、SIMロック解除しなければ既存端末を流用できないことが問題となっていた。MVNO向けのSIMロック廃止により、KDDIやソフトバンクの回線を活用したMVNOが増えそうだ。

 総務省は今回、携帯電話大手3社の端末販売にもさらなるメスを入れた。実質的な端末購入補助として使われていた販売奨励金を(4)で厳しく取り締まるほか、(5)で端末の調達費用ならびに下取り価格に照らし合わせた合理的な額の負担をユーザーに求めるべきとした。具体的には、「2年前の同型機種の下取り価格以上」。新機種でも実質負担額が低く、下取り価格も高い米アップルの「iPhone」が大きな影響を受けそうだ。

 携帯電話大手3社の実質負担額が上がれば、MVNOの対抗余地が大きくなる。総務省はMVNOを“第4の勢力”に育て上げ、圧力をかけていく考え。今後も同じペースを拡大できれば、MVNO市場は2017年中にも2000万件規模に達する見通しである。