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 仕事ができる人ほど、どこに落とし穴があるかを常に考えて先手を打っている。情熱を注いで立てた企画でも、想定外の事態への目配りやデメリットの考慮が足りないと、上司から「詰めが甘い」の一言で終わりだ。物事をネガティブな視点からも検討する癖を身に付けよう。

 「西部くん、岸井は君の後輩だったよな?」

 システム部の長野部長補佐は食堂で経営企画室の西部和彦に聞いた。

 「ああ、長野さん。そうですけど、岸井が何か?」

 「最近、システム部で岸井と一緒に仕事をしているんだけど…」

 「岸井の仕事ぶりはどうですか?」

 「前向きなのはいいんだけど、ちょっと詰めが甘いところが気になるんだ」

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 岸井雄介は35歳。西日本にある地方銀行A銀行のシステム企画室の課長補佐である。入社以来システム開発を担当し、システム設計、プログラム製作、テスト、移行などの仕事を行い、現在はシステム企画を担当している。

 西部和彦は37歳。A銀行でシステム企画の仕事を長く担当し、多くの仕事を成功させてきたエース人材で、岸井の大学の先輩でもある。最近、出向していたITコンサルティング会社から復帰し、現在は課長補佐として経営企画を担当している。

 岸井は現在、顧客を囲い込むための「ポイント制度」導入に関するシステム企画を担当している。金融商品を購入した顧客にポイントを付与して、次回の商品購入時に割引分として利用できるようにする。

 家電量販店のポイント制度は、電機製品を購入した顧客に購入金額の10%をポイントとして付与することが多い。1万円の商品なら10%=1000ポイントだ。1ポイント=1円とすれば、次回1000円分の割り引きが受けられる。

 購入金額を割り引く場合は次回も同じ店で購入する動機付けにはならないが、同じ店でしか使えないポイントの場合は再購入が期待できる。ポイント制度は単純な割引サービスよりも囲い込みの効果があるとされる。

 西日本の地銀であるA銀行は、商圏にメガバンクや他の大手地銀など競合が多い。最近ではネット銀行も台頭し、新規顧客の獲得や既存顧客の流出防止が大きな経営課題となっていた。

 そこでA銀行が販売する住宅ローンや生命保険、投資信託といった金融・保険商品にもポイントを付与して、新規顧客の獲得や既存顧客の囲い込みを図ることになり、情報システムの長野部長補佐とシステム企画室の岸井が担当となった。

 岸井はポイント制度に詳しい流通系コンサルティング会社C社に情報提供を依頼。ポイント制度の基礎知識、流通業や金融業での活用事例、A銀行がポイント制度を導入する場合の課題などについて情報を集め、長野部長補佐に説明した。

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