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日本交通はグループで3500台ある全タクシー車両に新型の車載器を導入、収集した情報を多目的に活用している。業界横断の配車アプリ「全国タクシー」で空車を即時に把握・表示できるなど利便性と精度を向上。さらに営業情報とネットの口コミから見込み客をリアルタイムに予測する「AI配車システム」の開発を進める。売り上げ1割増の効果を目標に、2017年の実用化を目指す。

 日本交通が運用している車載器「タクシーIP配車システム」は2015年から順次導入。日本交通が持つ車両1500台と、地方で営業する系列タクシー会社やM&A(企業の吸収・合併)でグループ入りしたタクシー会社などの持つ2000台にすべて配備済みだ。

 タクシー無線を使わず、携帯電話網(3G)を活用する。配車センターとの会話でなく車載器で操作する配車関連の機能のほか、走行経路や営業情報などの収集、自動車ナビゲーション機能などを1台に集約した。例えば、配車センターからの注文指示や運転手からの返答は、すべて車載器のディスプレイに触れることで受け答えが完結する。開発やサーバーを含む運用はIT子会社のJapanTaxi(旧・日交データサービス)が請け負った。

30秒ごとに営業・車両情報を収集

 総務省の周波数政策に基づき、タクシー無線はディジタル方式への移行中だ。しかし日本交通は、高速データ通信回線を安価に利用できる携帯電話網を活用する道を選んだ。JapanTaxiの岩田和宏CTO(最高技術責任者)はその理由を「新たに通信機能を開発すると、車載器の開発負担が膨れ上がり、扱えるデータも制約される」と説明する。システム名の「IP」はIP通信を意味している。

 車載器の主な機能は、(1)車両からの情報の収集・送信、(2)配車関連のコミュニケーション、(3)自動車ナビゲーション──である。Androidを搭載した主ユニットとディスプレイで構成。コネクターを介して車両や運賃メーター、決済端末とも接続して情報を収集する。

 車両からセンターに送信する情報は、現在位置、実車/空車/休車などで区分する営業情報、車速や燃費、アクセル開度などCAN(Controller Area Network)から収集できる車両状態のリアルタイム情報だ。これらの情報を通常時は30秒ごとにセンターに送信するが、迎車時などは更新頻度を高めて、きめ細かく情報を吸い上げる。

正確な位置情報で空車を検索

 情報の活用方法は大きく3つある(図1)。第1は、配車や営業情報の管理などの従来業務を効率化するための情報活用だ。自動的な情報収集で業務の把握や分析が効率化されたという。

図1●車両情報をリアルタイムで収集しアプリに活用する「タクシーIP配車システム」の構成
図1●車両情報をリアルタイムで収集しアプリに活用する「タクシーIP配車システム」の構成
日本交通グループの3500台に車載器を搭載、営業情報の収集のほかスマートフォンで利用できる配車アプリなどに活用している。
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 第2は、47都道府県に対応したスマートフォン向け配車アプリ「全国タクシー」の使い勝手や精度を高めるためだ。アプリはJapanTaxiが開発・運用し、170社強・3万台以上の車両が参画している。

 全国タクシーを立ち上げると、近くを走る空車(IP配車システムを採用した日本交通グループとシステムを外販した一部タクシー会社の車両)が地図上にリアルタイムで表示される。限定的ながら、空車や迎車の位置が分かる。運行状況を可視化できていることがアプリの好評価につながっている。

 IP配車システム搭載車では配車の精度も向上した。配車指示は30秒ごとに収集した車両位置から利用客に最も近い空車を検索して1台ごとに配車の注文を送る、一定時間で返答がなければ次に近い別の車両に配車の注文を送るという手順を採用している。無線タクシーを使っていた時代や情報の更新頻度が低い旧世代の車載器より検索精度が高まり、迎車が到着する時間が短くなった。アプリ上での待ち時間も正確になったという。

 第3の活用は、タクシーを利用したい見込み客が多い場所や時間を予測して、空車が待ち受けるという「AI配車システム」だ。現在開発を進めており、2017年の実用化を目指す。

 活用するのは過去の営業情報と、営業に影響したと見られる気象やイベント開催、鉄道運行などの情報だ。気象や運行情報は公式の情報も活用するが、重視しているのがTwitterなどネットでの口コミ情報だ。営業情報と、収集したこれらのデータの相関を機械学習などで調べる。活用する段階では見込み客がいる場所を地図上でヒートマップのように表示させて、運転手に知らせる。

 フィールド実験も過去に実施したが、現在は分析技術を磨いている段階だという。岩井CTOは「AIを使った需要予測により、営業成績を1割引き上げることが目標」と話す。

APIで回線速度やSIMの死活を管理

 車載器が使う3G回線はNTTドコモのM2M向けサービスを採用している。ただし契約更新に合わせて、ソラコムが提供するサービスに切り替える予定だ。契約が柔軟で料金メリットを出しやすいこと、契約期間の拘束がないことが採用の決め手になったという。

 JapanTaxiは、日本交通グループで採用するタクシー向け動画広告システム「Tokyo Prime」も開発し、こちらではソラコムのサービス「SORACOM Air」を当初から採用した(写真1)。

写真1●IoT向け回線で配信した動画を活用する広告媒体「Tokyo Prime」
写真1●IoT向け回線で配信した動画を活用する広告媒体「Tokyo Prime」
APIで回線速度を制御したり端末の死活を確認したりできるソラコムのIoT向け回線を活用した。
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 Tokyo Primeは後部座席に座る乗客に動画を見せる広告メディアで、タブレット端末に高精細な動画を蓄積、配信する。カメラによる画像識別や乗車エリアなどで視聴者をターゲット化して、広告を出し分けることが特徴だ。

 SORACOM Airは回線速度を変更する、SIM(端末)の死活を調べるといった機能をAPI(Application Programming Interface)として提供している。JapanTaxiはこのAPIを活用し、容量が大きい多種の広告動画を低コストで更新する運用を行っている。低料金で大容量データを送受信できる深夜に回線速度を増速させて動画を配信。電源が入っていない端末を調べて運転手に操作を指示するなど、広告効果を維持できるように端末を運用・管理している。