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標準対応度は40%程度だが、アプリ開発を活性化する期待も

 まとめると、現状の「iPhone+iOS 11」のNFC Forum標準対応度は40%程度だというのが筆者の意見だ。R/Wのサポートは限定的で部分開放に留まっており、CEについてもカード情報を保管する役割を担う「セキュアエレメント(SE)」がApple以外のデベロッパーに開放されていない。P2Pについてはそもそも触れられてさえおらず、以上を加味したスコアが40%というわけだ。

 恐らく、Appleとしては今回のCore NFCでの機能の部分開放を通してデベロッパーやユーザーの動向を見極め、さらに機能開放に踏み込むかを判断していくのだと考えられる。少なくともこれが実現するのは次のiOS 12以降であり、1年以上先の話となるだろう。

 とはいえ、悲観することはないとも筆者は考えている。NFCとタグを使ったアプリケーションの開発は、NFC実装が進んだGingerbread(Android 2.3.x)が登場した2010年以降に盛んとなり、現在はやや停滞傾向にあるように見える。試したいというアイデアが一通り出尽くし、多くの開発者らの興味も別の技術やトレンドに目が向いていることが背景にあると予想する。

 だが今回、古くて新しい技術としてAppleがCore NFCをリリースしたことで再び開発者らの目がNFCのR/Wモードへと向き、各種タグを使った面白いアプリケーション(アプリ)を再び開発してくれるのではないかと期待している。おそらく、Core NFC登場の最大の効果はこの部分にあるのではないかと期待している。

MWC 2013の会場に設置されていた案内板。目的地別にNFCタグが貼り付けられており、スマートフォンをタッチすることで情報が得られる。NFCタグの初期の実装例で、正直あまりインターフェイス的にはよろしくない(筆者撮影)
MWC 2013の会場に設置されていた案内板。目的地別にNFCタグが貼り付けられており、スマートフォンをタッチすることで情報が得られる。NFCタグの初期の実装例で、正直あまりインターフェイス的にはよろしくない(筆者撮影)
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セキュアエレメント開放でApple Payの可能性が広がる

 iOS 11での新機能は個人間送金が紹介されたことで、おそらく他の新機能や主力トピックの発表はiOS 12の世代へと持ち越されることだろう。「iPhone 7世代の海外版モデルでのFeliCa機能開放」が行われるという話もあるが、こちらはもうしばらく先になるになると筆者は考えている。

 目下最大の問題は、iPhoneのセキュアエレメントが部分的であってもいつ外部に開放されるかという点にある。セキュリティ上の懸念や操作が複雑になるという問題も抱えているが、一方でセキュアエレメントを利用するサービス事業者とAppleの両者にとってビジネスチャンスとなる可能性を秘めている。近い将来、部分開放は避けて通れないというのが筆者の予想だ。セキュアエレメントの開放により、例えば日本国内で未サポートの電子マネー(nanaco、WAON、楽天Edy)などがiPhoneで利用可能になる。

 Apple Payという名前からは、どうしても「決済」や「お金」というキーワードを連想しがちだが、Apple Payの将来はむしろそれ以外の分野での活用にかかっていると考えている。具体的には、「電子鍵」「身分証明書」「乗車チケット」「入館証」といった、従来までカードや紙など物理媒体で利用していたサービスを全て「Wallet」へと包含していく。

 著書の「決済の黒船 Apple Pay」でも少し触れたが、高級車ベンツのEクラスにはNFCリーダーが3ヶ所に設置されており、自動車のドアキーの解除からエンジン始動までをスマートフォンだけで操作可能である。スマートフォンが文字通り“電子鍵”として機能するのだ。

 ここまで先進的でなくても、車載のインフォテインメントでスマートフォンを中心にしたシステムの開発が進んでおり、スマートフォンと車を接続するためのトリガーがNFCになっている。恐らく、今後Appleもこの分野を視野に入れたNFC連携機能をiOSに取り込んでくるだろう。