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 「自分は分析担当者だ」と思い込んでいる部下が持ってくるアウトプットはいつも、「こういう分析結果でした」という内容のものが多い。例えば、図1、2のようなアウトプットを部下から受け取った上司のあなたは、どのようなフィードバックを返すべきだろうか。

図1●部下のアウトプット1
図1●部下のアウトプット1
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図2●部下のアウトプット2
図2●部下のアウトプット2
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 「我々の部署の過去4年間の売り上げについて、製品ごとに分析してみました。明らかに製品Bの売り上げが継続的に下がっています。一方で、製品Aの売り上げは順調です。製品ごとの構成比は、円グラフにしてまとめておきました。こちらです」

 この説明から分かるように、部下のデータ分析のゴールは「分析結果を出す」ことにとどまっているのが分かる。しかし、分析を依頼した側が最終的に欲しいものは、分析の結果がどうこうというものではなく、「結局そこから何が分かるのか、または何が言えるのか」である。分析結果がどうだったかは、本質的にはどうでもよい場合すらある。

分析結果を示すだけでは意味なし

 どんな分析にも当てはまることだが、グラフや指標による表記や手法を用いた分析結果から得られることはあくまでも「分析結果」でしかない。先の例でいえば、「ある製品の売り上げが伸びている、または下がっている」とか、「ある製品の売り上げ比率が全体のなかで高いまたは低い」とは、最終的な目的に対して、どのような意味を持つのかを考えてみよう。すると部下が言っている「下がっている」や「順調」という言葉そのままだと、ほとんど意味がないことに気づく。

 分析結果を自分の頭と言葉で解釈し、そこから導かれる本当の「結論」を示すことがビジネスでは大事なのは明白である。なぜなら同じ分析結果でも、そこから導かれる結論は必ずしも正解が1つとは限らないからだ。「あなたの目的は何か?」「知りたいことは何か?」によって、導かれる結論は異なってくる。しかも、その結論はデータによって導かれるものではなく、分析者自身が導くものである。

 この例でも例えば、「最も売り上げ比率が大きく、インパクトの大きい製品Bの売り上げが下がっていることが、現時点での最重要課題です。まずは原因を特定し、売り上げの回復策を固めることが急務です」とか、「製品Bの下落を補える有力候補は、ほぼ同じ売り上げ比率を持つ製品Aです。近年の売り上げの伸びの理由を特定し、さらに強みを補強することで、我が部の主力製品にできればと考えています。つきましては、販促費用を製品Bから製品Aにシフトすることを提案します」といった内容が「ビジネスにインパクトを与え、かつ人や組織を動かし、結果につながる示唆」となるはずだ。

結論を文章にして書く癖を付ける

 私が授業を受け持っている大学の講義や企業向けの研修において、データ分析の演習をする際には必ず、「分析結果を見て、『そこから何が自分なりに言えるのか』を結論として、文章で簡潔に書く」練習を全員に課している。

 最初のうちは分析結果だけを淡々とまとめていた人も、徐々に自分が得た結果から、どのような示唆が得られたのかを、自分の頭と言葉で深く理解するようになってくる。

 このとき、「文章にする」ことが何より重要だ。話し言葉であれば、思い付いたことをサラッと口頭で表現してそれで終わりになってしまうが、簡潔な文章にまとめようとすると、何が本質的なことか、何が明確で何が曖昧なのかを、じっくりと時間を取って考えざるを得ない。ぜひマネジャーのみなさんにも、自身の分析後の取り組み方の振り返りとして、また部下の訓練として試してほしい。

 さらに、分析結果に基づく提言(結論)をプレゼンテーションやリポートにまとめる際には、この結論の文章がそのままメッセージとして使える。グラフや表、分析結果そのものを幾つもシートに切り貼りして示すよりも、結論を示す簡潔なメッセージだけを載せる方が、相手には本質がより効果的、直接的に伝わるものだ。分析したものは全て見せようという衝動を一度意識的にリセットすることも時には必要である。

 繰り返すが、分析結果はあくまでも、最終結論の根拠の一情報に過ぎない。その事実を再度認識しておきたい。そのうえで、自分がアウトプットを誰かに見せる場合も、部下のアウトプットをチェックする場合も、以下の2点をしっかりと押さえておこう。

(1)言いたいことが述べられているか
(2)できるだけシンプルな形になっているか

 それではここで、(1)と(2)について詳しく見てみよう。

 初めてアウトプットを見せられる側(見せる側にとっては提案先)にとって、過剰な情報は(相手の)理解や納得を妨げる要因となる。例えば、グラフを見れば誰でも分かることを、グラフのタイトルやプレゼンのスライドタイトルにすることは避けたいものだ。代わりに「何を伝えたいのか」を明示することの方が望ましいのは、先に述べた通りである。

効果的に見せるため、何を載せるか

 それでは図3、4のようなアウトプットは、どちらが「見る側の目線に立った情報の伝え方」として望ましいだろうか。

図3●タイトルと中身がダブっている例
図3●タイトルと中身がダブっている例
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図4●メッセージが明記されている例
図4●メッセージが明記されている例
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 グラフの内容は、全く同じである。一方のタイトル「製品ごとの売り上げ推移」は「このグラフが何のグラフか」を示している。世の中、このパターンがとても多い。

 他方は、今期の最重要課題として「製品Bの売り上げ下落」を相手に伝えるべきメッセージとして明示している。見せる人が何を言いたいのか、どちらがより効果的に伝わりやすいかは一目瞭然だろう。

 しかも、製品ごとの売り上げ推移を示すグラフであることは、タイトルを見なくても、縦軸の「売上高」の表記や凡例を見れば、誰にでもすぐに分かる。このグラフのなかには、同じことがダブって表記されている(似たようなグラフが並べられていて、タイトルだけでその違いを判別させる必要がある場合は別)。

 同じ内容であれば、狭いスペースにダブって記載する必要はない。むしろ、情報量は少なく、シンプルな方が相手には伝わりやすい。

 にもかかわらず、これと同じ過ちを犯している例は極めて多い。意識しないと、つい簡単にミスを犯してしまう典型例といえるだろう。

 もう1つ、載せるべきものとして注意したいのは出典(データの出所)だ。出典とは採用したデータの入手先を示したものである。

 完全な社内データであれば、特に出所を問われないかもしれない。だが競合との比較や市場環境と組み合わせて分析した場合など、より広く情報を組み合わせて活用しようとすれば、外部のデータを使う機会は格段に増える。

 その際、出典を記載することを怠ると、著作権の問題が生じるだけでなく、アウトプットそのものの信頼性にも疑問符が付きかねない。

 いかに立派な分析内容や分析結果であっても、どのデータに基づいた結果なのかが分からなければ、最終結果を信用できるのかどうかを、誰も判断できない。

 信頼性の判断がつかない内容に対して、最終決断を下すことは難しく、リスクが高い。結果的に「言いたいことは相手に伝わっても、承認はされない」という結末に終わりかねない。これではそれまでの努力が全て水の泡である。原則として、出典は全ての図やデータに記載するくらいのつもりでいると間違いがない。

 特に、使うデータが「ネット上で偶然見つけたもの」や「ある企業が(おそらく何らかの意図を持って)発表したもの」などは、データとしての信頼性に疑問符が付くことが非常に多い。逆にそうではない、例えば行政や公的機関が公開しているデータは信頼性が比較的高い。

 そのような場合、むしろ積極的に出典をアピールすることをお勧めする。そうすることで、データそのものの信頼性だけでなく、それを用いた分析結果への信頼性も必然的に高まるからだ。ウェブサイトのURLも併記した、公的なデータの出典情報の例を図5に示しておこう。

図5●データの出典を明記した例
図5●データの出典を明記した例
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結論だけをうのみにしないのもリテラシー

 今度は結果を見せられる側から、同じことを考えてみよう。例えば、次のようなメッセージ(結論)だけ・・を部下に見せられたとする。「2017年の売り上げ実績、20%増」

 言いたいこと(メッセージ)は簡潔で分かりやすい。ただし、提示された結論だけをそのまま何も考えずに受け取るのではなく、その結論に至った背景を知る必要がある場合も出てくるだろう。20%増がどのように実現するのかを製品別で確認した結果、図6のようなことが分かるかもしれない。

図6●2017年の売り上げ20%増の裏側
図6●2017年の売り上げ20%増の裏側
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 これによると、2016年から2017年にかけての増分は全製品の合計としては20%であるものの、製品Bだけが突出して伸びており、その他はほぼフラットか微減という結果であることが分かる。

 この結論を一言でまとめたことが意図的か否かは別として、気になる背景を知りたい場合には、その内訳や根拠を示すように部下に求めるべきである。

 同じく、見せる側(プレゼンする側)は簡潔に結論を伝えると同時に、そこに至る背景の詳細を求められたときに、スマートに提示できる周到な用意が必要だ。そこまでできていれば、鬼に金棒である。

 このように、見せ方のリテラシーを身に付けることは、最終的に致命的なプレゼンの差をもたらすポイントとなり得るのだ。