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 「これから年末に向けて厳しくなっていくけれど、目標達成までもう一踏ん張りだ」―。東京・中央にある富士ゼロックスの日本橋支店。中央区以東の城東エリアの新規開拓を担う東京営業事業部NB支店 営業2グループの大川弘一グループ長は、朝の定例会議で部下の若手社員らに檄を飛ばす。

 一見、どこの会社でも見られるミーティングの光景だが、この会議には大きな特徴がある。開かれる場所が、自分たちの所属するオフィスではないのだ。大川グループ長らが所属するNB支店の本拠地は、都心を挟み反対側、日本橋から電車で40分ほどの中野区中野坂上にある。かつては定例会議も中野坂上のオフィスで実施していたが、2015年5月に日本橋支店内に「サテライトオフィス」が併設されたことで、定例会議の場所は同支店の「ファミレス席」に移した。

 日本橋支店はもともと、周辺地区の営業や顧客向けのフィールドサービスを担う地域密着型の拠点として設けられていた。営業範囲が比較的広いNB支店とは関連性が薄かった。日本橋支店が浸水対策で旧オフィスビルからの移転を決めたとき、新オフィスの座席をフリーアドレスにし、日本橋支店以外の社員でも使えるようにと、サテライトオフィスを併設したのだ。

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 日本橋支店の中央にはサテライト勤務者用の大型テーブルがしつらえてある。他に6~8人程度のグループで会議がしやすいように、さまざまな形のテーブルも用意してある。営業2グループや支店内の多くの部署が始業時にミーティングを開くことを考慮し、午前10時までは部署ごとに使うテーブルをあらかじめ決めた準固定席制を採用。10時以降は原則としてフリーアドレスとしている。オフィス設備としては、ノートパソコンに外付けできるディスプレー付きの机を壁際に配置したほか、各テーブルには会議時に資料を映し出せる大型ディスプレーも用意。無線LANと業務用パソコン、携帯電話用の充電端子も各席で使える。

目的に応じて複数のテーブルを用意、会議のしやすさなど配慮
目的に応じて複数のテーブルを用意、会議のしやすさなど配慮
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“本拠地”に戻るのは週1回で十分

 営業2グループがサテライトオフィスを使うのは、定例会議だけではない。普段の営業活動も、大川グループ長の部下らは日本橋や台東区入谷の支店にあるサテライトオフィスを基点に各自の担当地域を巡る。中野坂上の本拠地に戻るのは週1回程度だという。

 営業2グループで城東エリアを担当する泉水亮介氏は「以前は中野坂上のオフィスに朝出社してから城東エリアに向かい、夕方に再び中野坂上に戻っていた。営業先からの『宿題』に答える書類作成などは帰社後にやらざるを得ず、移動に時間がかかって退社時刻が遅くなりがちだった」。今は営業先に近い日本橋や入谷の支店をサテライトで利用でき、製本印刷対応のプリンターで提案書も作成できる。「本拠地に戻る時間が不要になったメリットは大きい」と強調する。

 中央区を担当する同僚の加藤えり氏も「前の営業先への訪問が済んで、次の訪問時間が来るまで、これまではカフェで時間をつぶしていた。人目のある場所でパソコンを開くわけにもいかず、資料を眺める程度しかできなかった。サテライトオフィスなら本拠地にいるときと同じ作業環境で仕事ができ、営業先からの質問は支店勤務のカスタマーエンジニアに相談して解決できる」と笑顔を見せる。

 泉水氏や加藤氏が体感しているメリットは、数字にも如実に表れている。営業2グループによる2015年4~9月の営業先への訪問件数は、前年同期の1768件から今期は2930件へと65%も増えた。そのうえ、1カ月当たりの平均残業時間は10~20%ほど減少した。

富士ゼロックスの加藤えり氏(左)と泉水亮介氏は東京・日本橋のサテライトオフィスを活用し、残業時間を減らしつつ営業効率を高めている
富士ゼロックスの加藤えり氏(左)と泉水亮介氏は東京・日本橋のサテライトオフィスを活用し、残業時間を減らしつつ営業効率を高めている
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 大川グループ長はサテライトオフィスの効果について、「新規開拓の営業は、客先への訪問回数をいかに増やすかが重要だ。ただしメンバーは全員が入社4年目以下と経験が浅く、1人で営業に回るだけでは不十分。営業部門の先輩やエンジニアに相談し、そこから学びを得ることが欠かせない。サテライトオフィスなら、営業効率を上げつつ、他の社員やエンジニアと話す機会が作れる」と指摘。残業の質も変わり、無駄な移動に時間を費やすのではなく、必要な残務処理だけに絞り込めた。「休めるときはしっかりと休み、メンバーが心豊かな状態で仕事に励めるようになった」(大川グループ長)と高く評価している。

 富士ゼロックスでは2015年から、こうしたサテライトオフィスを都心を中心に12カ所新設。既存の支店にサテライト勤務者用のスペースを併設する形で、営業2グループのような広域営業の業務効率を向上させている。ただ、ここに至る道のりは平坦ではなかった。

 同社のサテライトオフィスへの取り組みは四半世紀以上前までさかのぼる。同社を含む5社共同で、1988年に試験開設した「志木サテライトオフィス」(埼玉県志木市)を皮切りに、武蔵野(東京都三鷹市)、西葛西(東京・江戸川)、新百合ヶ丘(川崎市)、横浜、大宮(現さいたま市)など東京周辺に複数のサテライトオフィスを開設。当時はバブル経済による地価高騰もあり、従業員の通勤時間が長くなる傾向にあった。

 国会や中央省庁といった首都機能の地方移転が議論されるなど、東京一極集中を見直す動きが活発になった時期でもあり、富士ゼロックスなど民間の大手企業も郊外のベッドタウンにサテライトオフィスを設け「職住近接」を根付かせようとした。

 当時は東京近郊に加え、熊本県内に「リゾートオフィス」を設けるといった試みもあり、バブル期の時代背景を色濃く反映した計画になった。こうしたサテライトオフィスの取り組みは90年代に入ると、バブル崩壊とともに前提が変わったことで沈静化していく。

同じサテライトオフィスでも1980~90年代のものとは目的が異なる
同じサテライトオフィスでも1980~90年代のものとは目的が異なる
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 再び同社内にサテライトオフィスの機運が出てきたのは2013年ごろのこと。「夕方になると早めに客先訪問を切り上げて帰社しなければいけない、といった非効率な業務を見直すため、オフィスに立ち寄らずに直行直帰することを認めるなど従業員の働き方を改革する方針を打ち出した」(営業計画室業務企画・設計グループの雨宮健敏グループ長)のがきっかけだ。それに向けた環境整備の一環として、営業担当者へのノートパソコン配布などとともに、サテライトオフィスが再び脚光を浴びた。

サテライトオフィスの導入に併せ、IT機器やオフィス家具の使い方も見直した
サテライトオフィスの導入に併せ、IT機器やオフィス家具の使い方も見直した
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スペース2割減でも快適なオフィス空間に

 本格的なサテライトオフィスの最初の事例として、2015年春に移転を控えていた日本橋支店が選ばれたのは2014年秋のこと。内装は「2015年2月にかけて、総務部が日本橋支店の勤務者の声を聞き取りながら検討した」(総務部拠点第二グループの星野和也グループ長)。当初は各席にディスプレーを常設することも検討したが、最終的には壁際の一部のみにとどめ、テーブルでの会議のしやすさを優先した。

 また、袖机をなくして1人当たりの机の横幅を移転前の120cmから80cmに縮め、私物は壁際の個人用ロッカーに収納。一方で業務に必要な物の出し入れがしやすいように、必要な書類や事務用品一式をロッカーから机まで運ぶ専用バッグを支店の従業員に配布している。併せて、書類を段ボール120箱分も廃棄するなど、持ち物を減らしたうえで、2015年5月に新オフィスに移転した。

 支店の床面積は移転前の502坪から395坪へと21%も縮小したが、書類の廃棄や袖机の廃止により、サテライト勤務者用の席を追加しても狭さを感じないほどに。支店でサテライトオフィスとフリーアドレスの導入に携わった富士ゼロックス東京 カストマー・サービス本部の福士知行前副本部長は「自分たちで魂を込めた新オフィスだ。占有スペースの減少には反発もあったが、導入してみるとそれほど不便ではない」と胸を張る。

サテライトオフィスの導入を推進した、(左から)富士ゼロックスの雨宮健敏グループ長、富士ゼロックス東京の福士知行前副本部長、富士ゼロックスの星野和也グループ長
サテライトオフィスの導入を推進した、(左から)富士ゼロックスの雨宮健敏グループ長、富士ゼロックス東京の福士知行前副本部長、富士ゼロックスの星野和也グループ長
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