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 ブロックチェーンは、ビットコインなどの仮想通貨の基礎技術として登場した。その応用範囲は非常に広く、仮想通貨にとどまらず、企業や社会を根本的に変えてしまうかもしれない。

 この技術を理解する上で、電子マネーとの違いを考えると分かりやすい。電子マネーの世界では中央に王様のような存在がいて、すべての取引を記録した台帳を管理している。一方、ブロックチェーンの世界には管理者がいない。管理を担うのは、お互いが同じ情報であることをチェックし合うコンピュータの集合体である。これが最大の違いである。

仮想通貨、証券取引の決済、即時支払いの保険にも応用

 信頼性が必ずしも保証されていないコンピュータの集まりによって、極めて高い信頼性が求められる通貨を管理できる──。そこにブロックチェーンの革新性がある。誰でも参加できるオープンな仕組みは、パブリック・ブロックチェーンと呼ばれることもある。

 これに対して管理主体が存在するブロックチェーンもある。現在、英国やスウェーデン、中国などの中央銀行が、ブロックチェーンを熱心に研究している。数年以内に中央銀行が発行する仮想通貨は現実のものになるかもしれない。また、日本のメガバンクもブロックチェーンを用いた仮想通貨の発行計画を持っている。ただし、同じ技術を使っているとはいえ、ビットコインのようなオープンな仮想通貨とは大きく異なる。

 ブロックチェーン技術の応用は、仮想通貨だけではない。証券分野では、取引成立後の決済に活用する実証実験が各国で行われている。現状、株の取引は高速で行われているが、その後の決済に3日程度かかる。ブロックチェーンを用いれば、即時の決済が可能だ。保険分野でも、即時に支払いを行う保険商品がすでに販売されている。

シェアリングエコノミー、予測市場にも大きな影響

 金融以外でブロックチェーンの技術が有効なのは、例えばシェアリングエコノミーだ。旅行者などと空き部屋とをつなぐ米エアビーアンドビー、移動ニーズとドライバーをつなぐ米ウーバーテクノロジーズのようなサービスが急成長している。日本ではこうしたサービスに対する規制の議論が行われているが、実は、その先に重要な論点がある。それは、シェアリングエコノミーの自動化である。

 現在のシェアリングサービスには、エアビーアンドビーやウーバーのような管理者がいる。ブロックチェーンを使えば、管理者の役割を自動化できる。すでに実験的な試みがある。こうした観点からは、シェアリングエコノミーの現在の主役たちは過渡的な存在という見方もできる。

 もう1つの例は、予測市場である。米国などでは、ブロックチェーンを用いた予測市場が運営されている。「将来の出来事を予測して賭ける」市場は昔からあった。これまでの予測市場には管理者、言い換えれば胴元が存在したが、ブロックチェーンの予測市場には管理者がいない。管理者の有無は大きな違いである。従って、ブロックチェーンの予測市場は禁止できない。予測市場はこれまで賭博行為だとして禁止されてきた。それは、当局が管理者に命令して市場を閉鎖することができたからだ。しかし、ブロックチェーンの予測市場には、命令の対象となる管理者がいない。

 金融におけるサービスの多くは、予測市場の機能を提供している。例えば、農家などは先物取引を通じて、将来の収穫についてのリスクをヘッジできる。金融業界では先物取引が進化し、デリバティブやオプションなどの取引が行われている。ブロックチェーンならこうした予測市場を代替できる。

経営者も労働者もいない組織、それは、遠い将来の話ではない

 最後に、ブロックチェーンの応用が将来の社会をどのように変えるのかを考えてみたい。

 ブロックチェーンは、管理者や経営者の役割を代替することができる。一方、AIやロボットは主として労働者の仕事を代替する。このような前提で考えると、将来の企業一般を次の4タイプに分けられる。まず、経営者と労働者が両方ともいる企業。これは伝統的な株式会社だ。次に、経営者が存在するが、労働者のいない企業。これはAIやロボットを最大限に活用する企業だ。逆に、経営者がいなくて、労働者だけが働く企業もありうる。これはDAO(DecentralizedAutonomous Organization)、分散自律型組織と呼ばれる。そして、最後に経営者も労働者もいない企業である。

 こうした組織の登場は遠い未来の夢物語ではなく、近い将来に起こりうることだ。ただし、社会のすべての役割がコンピュータに取って代わられるとは思わない。どんな時代になろうと、人間にしかできない仕事は必ずある。そのような仕事を見いだし、追求する個人や企業が未来社会において重要な役割を担うことになるだろう。