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 LANケーブルは、企業ネットワークを構築するのに不可欠な構成要素だ。ただし、ルーターやスイッチなどの機器に比べると、軽視されがちである。しかし、LANケーブルが原因で通信障害が発生することがある。

主流はCat.5eとCat.6

 LANケーブルには、UTPケーブルとSTPケーブルがある。UTPケーブルはシールドされておらず、比較的ノイズの影響を受けやすい。オフィスや一般の家庭ではUTPケーブルに影響を及ぼすほどのノイズは考えられないため、通常はUTPケーブルを使用する。一方STPケーブルには、ノイズ対策のシールドが施されている。工場の大型機械などはノイズの発生源となり得る。そのような特殊な環境にLANケーブルを敷設する場合は、STPケーブルを使用する。

 LANケーブルには、いくつかのカテゴリーが規定されている(表1)。そのうち現在主に使われているのは、100MHzまでの伝送帯域を使って通信できるカテゴリー5e(Cat.5e)ケーブルと、250MHzまでの伝送帯域で通信できるカテゴリー6(Cat.6)である。伝送帯域が大きいほど、データの通信速度は速くなる。Cat.5e、Cat.6ともに、現在主流のイーサネット規格100BASE-TX、1000BASE-Tのどちらでも使える。長さの上限は両者とも100mで、それ以上の距離をつなぐには、光ケーブルを利用するかブリッジなどの延長用機器を利用する。

表1 LANケーブルの主なカテゴリーとイーサネット規格
表1 LANケーブルの主なカテゴリーとイーサネット規格
現在主に使われているのはカテゴリー5eやカテゴリー6。両者とも、ケーブル長の上限は100メートル。
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RJ-45コネクターを交換

 ケーブルの両端に装着されるRJ-45コネクターは、抜き差しを繰り返すと破損しやすい。イーサネットポートから抜けないようにするための爪の部分が特に折れやすい。爪が折れていても、ポートにコネクターが正しく差し込んであれば使用できるが、軽い衝撃で抜けてしまうので使わないほうがよい。最近では、爪の強度が高く折れにくいRJ-45コネクターが販売されている。LANケーブルの抜き差しが頻繁な箇所には、それらを選択するとよいだろう。

 RJ-45コネクターが破損したときは、コネクターを取り換えれば、ケーブルは交換せずに使用できる(図1)。コネクターが取り付けられているケーブルの根元部分をニッパーなどの工具で切断して交換すればよい。LANケーブルストリッパーと呼ばれる工具でケーブルの外側の被膜を取り除くと、中から色違いの8本の信号線が現れる。これらの線をRJ-45コネクターの金属端子に接続する。

図1 LANケーブルのRJ-45コネクターを付け替える
図1 LANケーブルのRJ-45コネクターを付け替える
LANケーブルのコネクターが破損したときは、コネクター部分を取り替えればケーブルは引き続き利用できる。
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 ケーブルとコネクターは、「かしめ工具」と呼ばれる道具を使えば比較的簡単に接続できる。その際は、8本の信号線を正しい順番に並べてかしめる必要がある。信号線の順番は、ストレートケーブルとクロスケーブルで異なる(図2)。

図2 ストレートケーブルとクロスケーブルの信号線の配線
図2 ストレートケーブルとクロスケーブルの信号線の配線
コネクターにつながる信号線の順番はストレートケーブルとクロスケーブルで異なる。A配線、B配線はANSI(米国規格協会)が定めた結線規格で、A配線とB配線を組み合わせるとクロスケーブルになる。
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 ストレートケーブルは、両端のRJ-45コネクターにつながる信号線の順番が同じだ。クロスケーブルは、両端のコネクターで順番が異なる。信号線の色の順番は規格で決まっており、A配線とB配線がある。A配線とB配線を組み合わせたのがクロスケーブルだ。

 ケーブルの先を切り取った後でよいので、コネクターがA配線かB配線かを確認し、同じ順番でコネクターを付け直す。元のコネクターの結線順と同じになればよいので、A配線とB配線のパターンを覚えておく必要はない。

 コネクターを付け替えた後は、通電を確認する。ただし実際にネットワーク機器に接続しなくても、LANケーブルチェッカーを使ってテストできる。チェッカーにケーブルの両端のコネクターを接続して動作させると、ケーブルの8本の信号線とコネクターの金属端子が正しく通電できるかどうか、1本ずつ確認される。ケーブル不良によるトラブルを避けるために、チェッカーによるテストは実施しておきたい。

 LANケーブルのケーブル部分は丈夫なので、コネクターが破損しなければ、屋内利用なら20年、30年と長く使用できる。ただし、外的要因でケーブルに力が加わった状態が続くと、ケーブルが劣化し通信障害が発生する可能性がある。古く傷んだケーブルは、早めに交換することが望ましい。

 LANケーブルが原因で発生した障害は、その原因を突き止めるのが難しい。接続されているのがインテリジェントスイッチでログを確認できる環境だったとしても、そのログからLANケーブルの異常はわからない。そのため、原因の究明に当たっては、障害原因になり得る構成要素を一つひとつ確認していくしかない。

 具体的には、障害原因になり得るネットワーク機器を交換したり、接続するポートを変えたり、設定を変更したりして、起こり得る障害原因を排除していく。それでも障害原因が見つからなければ、ケーブルが怪しいと考える。

 現在企業内ネットワークで使われているLANケーブルうち、最も古いものはインターネットが普及し始めた1990年代後半ごろのものだろう。LANを導入してから使い続けているケーブルは少なくないはずだ。その場合、使用期間は約20年。今後は、LANケーブルの不具合が原因の障害が増えていくことが予想される。

時々通信が途切れてしまう

 それでは実際に、LANケーブルの不良でネットワーク障害が発生したあるユーザーの事例を紹介しよう。筆者の顧客企業のネットワーク管理担当者から、ネットワークの調子が悪いので確認してほしいという連絡があった。現地に駆けつけて話を聞いたところ、オフィスのある部署で、通信が30分ほど途切れてしまうことが時々あるという(図3)。

図3 トラブルが発生したネットワークの構成
図3 トラブルが発生したネットワークの構成
トラブルが起こった部署(図の部署A)のパソコンはすべて通信できない状態になっていた。パソコンはL2スイッチに接続され、サーバールームのL3スイッチにつながっている。
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 その現象が起こったときは、部署のレイヤー2(L2)スイッチのLANケーブルを抜き差しすると、接続が回復するという。L2スイッチは部署の机の上に設置されており、部署内の各パソコンにLANケーブルを分配していた。

 筆者が現地に到着したときには、障害は発生していなかった。通信確認のためにその部署のL2スイッチにつながっているWindowsパソコンからインターネットへの接続を試すと、正常につながった。L2スイッチの稼働ステータスやリンクの状況を示すLEDランプにも、おかしなところはなかった。そのL2スイッチはノンインテリジェントスイッチだったので管理画面はなく、ログなどで障害原因を調べることはできなかった。

 L2スイッチは、各部署のスイッチを束ねるレイヤー3(L3)スイッチに接続されていた。L3スイッチはインテリジェントスイッチなので、管理画面で状態を確認できた。このL3スイッチは、オフィスと通路をはさんで向かい側にあるサーバールームのラックに設置されている。

 管理画面には、オフィスのパソコンから、TELNETテルネットで接続できる。早速L3スイッチにログインして、状態を確認した。ログからは、問題となっている部署のL2スイッチが接続されているポートのリンクが、頻繁にアップダウンを繰り返していることを確認できた。そのダウン時間は、数秒のものから30分ほどのものもあった。ユーザーがケーブルを抜き差しすることで通信が回復しているので、復旧時間にはムラがある。

スイッチ交換やVLANポート変更

 続いて、障害原因の切り分けに取り掛かった(図4)。まず、障害が発生している可能性のあるL2スイッチを、一時的に別のものに交換することにした。このとき、元のL2スイッチと同じポート数で、なおかつインテリジェントなものを選択した。インテリジェントスイッチであればログ機能を備えており、障害発生時の原因究明に利用できるからだ。交換したスイッチにTELNETで接続できるように、IPアドレスとTELNETサーバー、ログインIDを設定した。

図4 通信障害の原因を突き止めるための対処
図4 通信障害の原因を突き止めるための対処
問題が発生しているL2スイッチを撤去し、別のスイッチに交換した。また、L3スイッチの別のポートにVLANを設定して、ポートの故障の可能性を調べた。
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 L3スイッチに接続されている他のセグメントでは、問題が発生していない。このことから、L3スイッチの障害ではなさそうだと考えた。しかし、問題の部署につないだポートに問題が発生している可能性はある。そこでL3スイッチで、問題の部署につながっているポートと同じVLANを別のポートに設定し、問題の部署へのケーブルをそのポートに差し替えた。

 また、問題の部署のL2スイッチは、電源タップで延長したコンセントから電源を取っていた。電力関係の不具合を考慮し、延長コードを取り外して、建物に設置されたコンセントにつなぎ直した。

 交換したL2スイッチには、内蔵電池が組み込まれていない。NTPサーバーとの同期設定をしていないと、電源を切断すると時刻が失われて、ログに正しい時刻が記録されなくなる。NTPサーバーの設定を最後に行って、その日の作業を終わりにした。

再度の障害でリンクダウン確認

 後日、またネットワークの調子が悪くなったという連絡を受け、対応に駆けつけた。現地に着くと、既にユーザーがLANケーブルの抜き差しを試した後で、通信障害からは復旧していた。

 早速、L3スイッチと部署のL2スイッチの管理画面にTELNETでアクセスしてログを確認した。すると、不特定の間隔で何回か、L3スイッチに接続されているインタフェースのリンクがダウンしていることを確認できた。復旧後のインタフェースの状態は正常であり、異常時にインタフェースがどのような状態だったのかは不明だ。

 顧客によると、その日は大事な業務があるのでネットワークが止まると困るという。何とかしてほしいとのことだったので現場で待機することにした。待つこと約1時間、顧客から障害が発生したとの報告を受けたので、障害範囲を確認することにした(図5)。

図5 ブラウザーとpingによる通信確認で障害発生範囲を絞る
図5 ブラウザーとpingによる通信確認で障害発生範囲を絞る
デフォルトゲートウエイへpingを送信すると、通信が届かなかった。これにより、パソコンとL3スイッチの間で障害が発生していることがわかる。
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 これまでは復旧した後の状態しか確認できなかったが、ここで初めて障害時の状態を確認できた。L2スイッチに接続されているパソコンからWebブラウザーでインターネットへの接続を試したところ、接続できなかった。コマンドプロンプトを起動してipconfigコマンドを実行し、パソコンに設定されたデフォルトゲートウエイを確認。そこにpingを実行すると、疎通を確認できない。L2スイッチに接続されている他のパソコンでも同じだ。L3スイッチとL2スイッチでインタフェースの状態を調べると、わかるのはリンクがダウンしていることだけで、その他の異常は確認できなかった。

 早くネットワークを回復させなければならなかったので、とりあえずLANケーブルを何回か抜き差しすると、接続されているポートのLEDランプが点灯し、通信が回復した。

LANケーブルを交換

 ここまで、想定される障害原因を一つひとつ調べてきた。唯一確認できていないのが、LANケーブルである。あとはLANケーブルを交換してみる必要がある。

 LANケーブルは、床下から配線されていた。その先は廊下の先のサーバールームまで床下を通って配線されている。そのため、LANケーブルをすぐには交換できない。床下に敷設されているケーブルで余っているものはなかったので、流用もできなかった。

 幸いなことに、L2スイッチの設置場所から、オフィスの出口を通って向かい側のサーバルームまでの距離は50mほどしかなかった。そこで、一時的に床上に別のLANケーブルを配線して、症状の改善を確かめることにした(図6)。

図6 一時的に床上にLANケーブルを敷設
図6 一時的に床上にLANケーブルを敷設
床下配線でのLANケーブルの交換はすぐにはできなかったため、一時的に床上に配線してオフィスフロアのL2スイッチとサーバールームのL3スイッチを接続した。
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 サーバールームには、利用されていないLANケーブルが置いてあった。かなり長いケーブルで、サーバールームからオフィスまで届きそうだった。ただし、ケーブルの片側にはRJ-45コネクターがなく、切断されたままの状態である。顧客に確認すると、ケーブルを新たに配線するときのために用意しているもので、その都度必要な長さに切って使っているという。かしめ工具とRJ-45コネクターも常備してあるので、それらを借りて、ケーブルにRJ-45コネクターを取り付けた。

 L3スイッチとL2スイッチは、クロスケーブルで接続するのが基本だ。ただし、L3スイッチはケーブルの種別を自動認識するAuto-MDI機能を備えていた。そこで、ストレートケーブルを作成した。コネクターの取り付け後はLANケーブルチェッカーで通電を確認してから、オフィスからサーバールームにケーブルを配線。L3スイッチとL2スイッチには、これまでと同じポートに接続した。両装置のポートのLEDランプは正常に点灯した。

 L3スイッチとL2スイッチの両者について管理画面で状態を確認すると、全二重接続で正常だった。L2スイッチに接続されているパソコンからデフォルトゲートウエイにpingを実行すると、疎通が確認できた。インターネットにも問題なくつながるようになった。

 床上に配線したLANケーブルは、通行人が足で引っ掛ける恐れがある。床のカーペットをはがすと、容易に取り外せるタイプの床板だった(図7)。思いのほか簡単に床下へのLANケーブルの敷設ができそうだったので、オフィスとサーバールーム間のカーペットと床板を一列はがし、新しいLANケーブルを床下に敷設した。

図7 床下にLANケーブルを設置
図7 床下にLANケーブルを設置
カーペットの下の床板を外せたので、交換したLANケーブルを床下に配線し直した。
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 後日、一時的に設置していた検証用のL2スイッチを元のL2スイッチに戻した。それ以降、障害が発生することはなかった。

▼UTP
Unshielded Twist Pairの略。
▼STP
Shielded Twist Pair の略。
▼RJ-45
RJはRegistered Jackの略。米連邦通信委員会に登録されている通信用コネクター規格の一つ。UTPケーブルやISDNの接続コネクターとして利用される。そのほかに2線の電話線に利用されるRJ-11、4線の電話線に利用されるRJ-12、RJ-14がある。
▼ストレートケーブルとクロスケーブル
一部例外もあるが、ストレートケーブルは主に、コンピュータとネットワーク機器間の接続に用いる。クロスケーブルは、ネットワーク機器間の接続に使う。
▼インテリジェントスイッチ
基本的なフレーム転送機能のほかに様々なプロトコルや付加機能が搭載されていて、コマンドや管理画面で設定できるスイッチ。
▼ノンインテリジェントスイッチ
基本的なフレーム転送機能しか備えておらず、コマンドや管理画面での設定機能を持たないスイッチ。
▼VLAN
Virtual LANの略。
▼NTP
Network Time Protocolの略。
▼Auto-MDI
MDIはMedia Dependent Interfaceの略。