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 エバラ食品工業は2014年7月、ネットを活用した優秀な広告・マーケティングを表彰するD2Cの「コードアワード2014」(従来のモバイル広告大賞)でグランプリを獲得した(関連記事1関連記事2)。同社は、子供が「エバラ 浅漬けの素」で苦手な野菜を食べられるようにすることを狙った販促サイトを開設。パソコンの前で口を動かすだけで楽しめるゲームが話題を呼んだほか、イベントと連動した商品の訴求が評価された。同社でプロジェクトを推進した商品開発部家庭用商品開発第一課 担当課長の毛利英輔氏に、狙いや効果などを聞いた。

(聞き手は榊原 康=日経コミュニケーション


販促サイト「おくちの中の遊園地」を開設した経緯は。

エバラ食品工業 商品開発部家庭用商品開発第一課 担当課長の毛利英輔氏
エバラ食品工業 商品開発部家庭用商品開発第一課 担当課長の毛利英輔氏
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 「エバラ 浅漬けの素」は、1991年5月に発売を始めたロングセラー商品だが、成熟化が進んでいた。和食の“箸休め”のポジションから、どうしても抜け出せなかった。洋食化の波がある一方、食卓に上る品数も減少傾向にある。次第に隅に追いやられ、出現頻度が徐々に減っていった。ピーク時(1993年度)に47億円あった売上高は、2008年度に35億円まで落ちた。このまま縮退していくのは目に見えており、テコ入れが不可欠だった。

ピーク時(1993年度)に47億円あった売上高は、2008年度に35億円まで落ちていた
ピーク時(1993年度)に47億円あった売上高は、2008年度に35億円まで落ちていた
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 当時、商品購入者の約60%は50~60歳代。若返りを図るために目を付けたのが、子供のいる主婦層である。きっかけは、料理教室だった。当社ではCSR(企業の社会的責任)の一環として、小学校や中学校を訪問して料理教室を開いている。その場に立ち会って様子を見ていると、子供にはセロリやニンジン、トマトなど苦手な野菜が必ずあるわけだが、自分で野菜を切って(浅漬けの素で)漬けると、自然と食べるようになる。それを見た両親もびっくりしながら喜んでいる。

小学校や中学校で開催している料理教室の様子
小学校や中学校で開催している料理教室の様子
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 料理研究家の先生に話を聞くと、子供は苦みや酸味が苦手だが、何かきっかけがあれば食べるようになるという。きっかけを作ることが大切で、これは商品の新しい価値として訴求できるのではないかと考えた。つまり、子供に野菜を食べさせたいと考える主婦層に対し、浅漬けの素を使えば野菜を食べられるようになるとアピールするわけだ。2010年にプロモーションを一気に切り替えた。おくちの中の遊園地も同じ狙いがあり、料理教室の体験をデジタル領域に広げたいと考えた。

それ以前のデジタル領域への取り組みはどうだったのか。

 「浅漬けの素ポータルサイト」を開設した。「もっと野菜を楽しもう」というキャッチコピーで、お薦めレシピや野菜に関する豆知識、「エバラお野菜学園ママさん部」でアンケート結果などを紹介している。

 ただ、食品メーカーは少し古臭い部分があり、デジタル領域への取り組みは他の業界に比べて遅れている。なぜなら、我々のタッチポイントはスーパーマーケットの店頭が中心だから。店頭でのプレゼンや商品流通などにマーケティング費用を投下せざるを得ない。このままではまずいと考え、社内で半ば強引に進めたのが、おくちの中の遊園地になる。途中で失敗もあったが、子供のいる主婦層向けのプロモーションが全体的にうまく進んでいるなか、デジタル領域でも積極的に訴求していくべきと判断した。

 当社では消費者調査を定期的に実施しており、優良顧客を含めた購買層は現状、全体の約40%。商品の認知度は約70%に達しているが、未認知者と認知未購入者の合計は約60%もある。これをどう購買層にシフトしていくか。店頭でのプロモーションやテレビCMだけでは限界があり、もっと広く伝えていかなければならない。デジタルコンテンツで楽しさや驚きを伝えながら、話題性を高めたいと考えた。