PR

 NTTドコモは2016年6月から2017年3月にかけて、人工知能(AI)を活用したタクシーの需要予測システムの実証実験を行う。東京に地盤のあるタクシー会社の組合である東京無線協同組合、車載機器大手の富士通テン、位置情報サービス基盤を提供する富士通が参画する。

 東京都内で営業する東京無線の乗降実績データと、ドコモの携帯電話ネットワークの仕組みを利用して生成される「リアルタイム人口統計」データを基に、需要予測モデルを構築する()。地域のイベント開催情報や気象情報、移動先となり得る施設のデータなども加味する。

図 NTTドコモが東京無線協同組合などと進めるタクシー需要予測の概要
携帯電話ネットワークの仕組みとAIを活用
図 NTTドコモが東京無線協同組合などと進めるタクシー需要予測の概要
[画像のクリックで拡大表示]

 2016年内をメドに、「30分後の予想乗客数」の情報を東京無線のドライバーに提供できるシステムを作り、配車の効率化に役立てる。事前検証では、予測がプラスマイナス20%の誤差にとどまるケースが全体の7割程度という精度だった。実証実験を通じて解析手法を改良し、9割近くにまで精度を高めるのが目標である。

経験と勘による予測から脱却

 ドコモの法人ビジネス本部 IoTビジネス部 ビジネス企画担当部長の那須和徳氏は、「従来はドライバーの経験と勘に依存していた要素をAIで支援する。タクシー会社にとっては実車率向上に、乗客にとっては待ち時間短縮に役立つはず」と説明する。

 実現に向け、まず「リアルタイム人口統計」を開発する。ドコモはすでに、約7000万台の携帯電話の基地局接続状況を基に、個人を特定しない形で、ある時間帯に500メートル程度のメッシュに含まれる人口を統計化する技術を確立している。ただし、データ量が膨大なこともあり、従来は1時間ごとの人口データを3カ月後に提供していた。これを改良し、10分ごとの人口データを20~30分後に提供できるように、システムの追加開発を進める。

 次に、予測モデルをどこまで的確にできるかという課題がある。移動需要は人口データのほかに、施設データや天候、イベントなどの要因に左右される。「新技術を使えば、プロ野球の試合のような大規模イベントだけではなく、日常的な小規模イベントに伴う需要も予測できる」(那須氏)。ドコモはNTTグループのAI技術「corevo」を採用。大量の行動データから、繰り返し出現するパターンを機械学習で抽出し、乗客数の予測に生かす。

 夜の飲み会のような日常的なイベントに伴う需要は比較的予測しやすい。繁華街の施設に2~3時間滞在した後にタクシーを利用する行動パターンが繰り返し出現するため、機械学習エンジンに多くのデータを与えられる。

 ドコモが重視するのが、鉄道の遅延・運休に伴うタクシー代替利用の予測だ。鉄道の遅延・運休は頻繁に起こらない。需要は急速に高まるが、復旧後に収束するのも速い。こうした現象は日常的なイベントに比べれば発生頻度が低く、機械学習エンジンに与えるデータの絶対量が限られる。需要変動のメカニズムを解明するには、長期にわたってデータを蓄積する必要があると見ている。