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 日本航空(JAL)が、ストレスフリーなオフィス環境を構築すべくIoT(Internet of Things)の活用に乗り出した。

 2015年10月5日から、間接部門で働く従業員約80人が名札型のセンサーを勤務時に着用する取り組みを開始している(写真)。約3カ月かけデータを収集し、従業員の行動に関する“ビッグデータ”を人工知能を使って分析する。

写真 日本航空の間接部門従業員が着用する名札型IoTセンサー
社員が仕事を楽しんでいるか落ち込んでいるかも分かる
写真 日本航空の間接部門従業員が着用する名札型IoTセンサー
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 狙いは、オフィス内の各組織で活性度を可視化することだ。社員がストレスを感じやすいエリアがあればレイアウトなどを改善。働きやすさを生産性向上につなげ、競争が激化する航空業界での生き残りに結びつける。

 「間接部門では近年、固定電話・机を廃止して、フリーアドレス制のレイアウト導入を推進している。ワークスタイル変革の施策が本当に従業員の満足につながっているのかを検証したかった」。今回の取り組みを指揮したIT企画本部IT運営企画部次世代技術企画グループ兼人財本部人事部ワークスタイル変革推進室の小磯貴之マネジャーはこう語る。

 白羽の矢を立てたのが、日立製作所の名札型のIoTセンサーを使ったストレス分析環境である。中央研究所の矢野和男氏が長年研究してきたものだ。

 名札型モジュールは、三軸加速度センサーと赤外線センサーを内蔵しており、細かな身体運動を捉えることができる。デスクワークをしている時でも身体運動は起きる。歩数計では分からない従業員の正確な動きを可視化できるわけだ。

 開発元の日立によると、オフィス内で机に座ったままの状態も含めて継続的に運動量の推移(行動リズム)を測ると、仕事を楽しんでいるか落ち込んでいるかも導き出せるという。

誰と誰が会ったかまで分かる

 赤外線センサーは、他の従業員が下げる名札にある赤外線センサーと連携し、誰と誰が一緒に居たのかを調べるもの。名札同士が赤外線通信すると、一緒に居たことが自動的に記録される。

 社員が退社時に名札型センサーをクレードルに返却すると、充電が始まると同時に三軸加速度センサーと赤外線センサーが計測した1日分のデータが日立のデータセンターに送信される。人工知能を使った分析システムを活用し、ストレスの状態を可視化する。

 「Aさんは、Bさんと一緒にいる時は落ち込みやすい」「Z部署は、メンバーが組織内を頻繁に動き回ってコミュニケーションが活性化している」。そんな様子が浮かび上がってくる。

 まずは実証実験として、本社間接部門であるIT企画本部、調達本部、人財本部の3本部に導入する。各本部から対象者を無作為に抽出。個人の詳細な行動履歴を取得するため、本人の同意も得て実験を行う。

 3本部を選んだのには理由がある。IT企画本部はフリーアドレス制などを先行実施し、調達本部も1年前から実施している。一方で人財本部は未実施で、導入段階の違いによってストレス度合いに差が出ているかどうか検証したかったという。「従業員向け施策の影響を着実に検証することを重視したい」(小磯マネジャー)。

 まだデータを取り始めたばかりで、具体的に分析結果を導き出すのはこれからだ。各本部で3週間分のデータを蓄積したうえで、12月までに分析を完了する計画である。