PR

新築住宅向けの事業からリフォーム需要中心の事業へとシフトするため、顧客のデータ活用に一歩を踏み出したLIXIL。主力商品である住宅設備機器などのデジタル化も見据えて、CDO(最高デジタル責任者)は企業文化のリフォームを始めた。

東京工業大学卒業後に住友商事へ入社。2001年に建材などのECサービスを運営するMonotaROの創業に加わり、事業開発やマーケティングなどを担当。2014年からMonotaROの出資元である米グレンジャーでバイス・プレジデントを務める。瀬戸欣哉社長兼CEOに請われ2016年にCDOに就任。(写真:陶山 勉)
東京工業大学卒業後に住友商事へ入社。2001年に建材などのECサービスを運営するMonotaROの創業に加わり、事業開発やマーケティングなどを担当。2014年からMonotaROの出資元である米グレンジャーでバイス・プレジデントを務める。瀬戸欣哉社長兼CEOに請われ2016年にCDOに就任。(写真:陶山 勉)

 日本の建築材料・住宅設備機器業界は岐路に立っている。人口が増えていた時は新築住宅向けに商品を供給していればよかった。しかし、少子高齢化が進む今後は、新築物件はどんどん減っていく。建材・住宅設備メーカーはリフォーム事業へとビジネスの中心をシフトしなければならない。

 必要なのは消費者目線での事業展開だ。新築物件向けでは工務店や卸など流通事業者に商品をアピールしてきた。多くの場合、建材や住宅設備を選ぶのは、住宅を買う消費者ではなく工務店などの事業者だったからだ。リフォームでは消費者が建材や住宅設備を選ぶ。消費者に選ばれる企業になるために、これまでとは違うアプローチが必要だ。

IoTで生活データの分析も

 消費者という顧客の目線で事業を展開するためには、顧客を知らなければならない。私がCDOに就任した意味はそこにある。ITを使いデータを集めて分析する。ITに取り組みたいのではなく、顧客目線の事業のためにITを最も優れた道具として活用する。

 新築物件向けの事業が中心だったこともあり、LIXILの現場では顧客データを使うという意識が弱かった。意識改革を進めているが、顧客データ分析は緒についたばかり。CRM(顧客関係管理)システムを導入し、外部のDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)が持つ消費者のネットでの行動履歴データも使って、広告の効果測定などを始めたところだ。

 特に力を入れているのは、ネット広告やLIXILのサイトを見た消費者をショールームへと「送客」することだ。住宅設備のような高額商品は、EC(電子商取引)サイトで気軽に購入するようなことにはなりにくい。ショールームが顧客目線での事業展開のうえで重要な役割を果たす。

 ショールームでのサービスにもITをどんどん使っていく。例えばIH調理器などのオプションを設置したシステムキッチンのイメージを3D画像で表示できるようにした。オプションは多数あるが、ショールームで展示できる組み合わせは一部。高額商品にもかかわらず、顧客に具体的なイメージをつかませずに販売していたといえる。

 将来は商品そのものにもITを使っていくことになる。建材や住宅設備からデータを収集してメンテナンスやリフォームの提案ができるようにする構想は当然、検討している。それを見越して、LIXILが運営する老人ホームでサッシなどにセンサーを設置し、室内外の温度差が大きいと注意を促すようなサービスを試している。

 建材や住宅設備と連携したIoT(インターネット・オブ・シングズ)サービスは、様々な生活データを収集できるためプライバシーの配慮が必要で、セキュリティ面でのリスクもある。それでも便利であれば導入が進むのは、米国でのアマゾンエコーなどスマートスピーカーの普及を見れば明らか。うかうかしていると、スタートアップ企業などに顧客を奪われかねない。ニーズをしっかりと見極めてIoTサービスを企画していきたい。

 実は、LIXILが買収したドイツのグローエは水漏れを検知するIoTシャワーヘッドなどの販売を始めている。日本でもいずれ商品開発に取り組まなければならない。ドイツと日本だけでなく、世界各国・地域で事業におけるIT活用とデジタル化の段階が異なり、地域特有の課題もある。それぞれの国や地域で最適なデジタル推進策を取りまとめるのもCDOの役割だ。

デジタル組織もIT部門も内製推進

 事業のIT活用、いわゆるデジタル推進組織は、既存のIT部門と別にした。コスト削減や効率化が任務のIT部門と違って、デジタル推進の案件は費用対効果を見積もりにくい。同じ組織で同じ予算枠では、会計などの業務システムが優先されがちだ。現時点ではデジタル推進組織をマーケティング本部の下に置いている。

 とはいえ、デジタル推進組織とIT部門は毎週ミーティングをするなど密接に連携している。LIXILのIT活用を支える両輪として重要な役割を担う。今、技術者の中途採用など内製化に向けた取り組みを進めているところだ。