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 2020年度から本格稼働する400ペタフロップス前後のスーパーコンピュータ、いわゆる“ポスト京”には、英ARM社のARM64アーキテクチャに基づいた富士通製プロセッサが搭載されることが決まった。スパコン情勢に詳しい大学関係者が明らかにした。

 スパコンにおけるARMプロセッサの採用は世界初となりそうだ。2019年6月または11月に、ARM搭載のポスト京が登場、LINPACベンチマークで世界1位を目指す。現在、スパコン性能TOP500にARM搭載機はない。さらに400ペタ機を拡張し、1エクサフロップスの達成を目指していく。

 この決断は富士通のサーバー戦略に大きな影響を及ぼす。富士通は理化学研究所へ納めたスパコン京に、米サン・マイクロシステムズ(現オラクル)のSPARCアーキテクチャに基づく富士通製プロセッサを搭載していた。ただし富士通は「理研から受注した基本設計作業の最終段階にあるため何も申し上げられない」(広報)と、ポスト京に関する一切の論評を拒否した。

ARMだけで構成、GPU使わず

 ポスト京の特徴はARMプロセッサだけで構成し、アクセラレータを搭載しないこと。プログラミングが容易で、あらゆるアプリケーションに対して一定の処理性能を出せるという。昨今のスパコンはプロセッサにGPU(画像処理プロセッサ)などのアクセラレータを付加し、処理性能と消費電力効率を追求しているが、従来型スパコンに比べ、プログラミングが難しくなるなど使い勝手の課題が指摘されていた。

 先の大学関係者は「スパコンの常識とされる1ワット当たり12ギガフロップスという目標に対し、富士通はアクセラレータを使わずとも、ARMとインターコネクトなど先進技術の組み合わせで達成できる目途をつけた」と説明する。

富士通とARMが“新日英同盟”

 プロセッサをSPARCからARMへ切り替える理由は「ARMスパコンの可能性」だろう。外資系メーカーでHPC(高性能コンピューティング)の技術開発に関与してきたある技術者は次のように推測する。

 「HPC分野への進出を目論むARMと富士通との間で技術協力の話がまとまったのだと思う。欧州としてもビッグデータ&アナリティクスという新分野で戦うために、欧州の技術に基づくスパコンが欲しい。英ICLを買収し、英国や欧州のビジネスに力を入れている富士通への期待があってもおかしくない」。

 ARMは命令セットアーキテクチャの設計会社で、ライセンスをプロセッサメーカーに売る。プロセッサメーカーは機能を自由に追加してプロセッサを製造・販売する。富士通はHPC関連の機能をARMの命令セットアーキテクチャに付加することに協力するとみられる。

 先の大学関係者は「電力消費効率に優れるARMプロセッサはスマートフォンやタブレットの市場を制覇し、2014年からサーバー市場へ参入した。スパコンへの進出は時間の問題であり、理研と富士通はポスト京で世界初の挑戦をする価値がある」と評価する。

 富士通とARMの“新日英同盟”と競う米国は、エクサの前段階となる「プレエクサ級プロジェクト」を複数の国立研究所で進める。オークリッジ研究所とローレンス・リバモア研究所は米IBMの次期プロセッサPower9に米NVIDIAのGPUを組み合わせ、2018年までに150ペタフロップスを出す。

 アルゴンヌ研究所のプロジェクトは米CRAYと米インテルが担当、インテルのXeonとコプロセッサPhiを使って、2018年までに180ペタフロップスを出す。いずれも契約時は150~180ペタだが、その後300~450ペタへ引き上げ、さらにもう一段の拡張で1エクサを狙っていく。