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 ドイツが国策として推し進める、ITを使って製造業の競争力を高める取り組み。製造設備に取り付けたセンサーで生産工程に関するデータを収集し、生産性向上に役立てる。このようなIoT(Internet of Things)を駆使して生産性を高めた工場を「スマート工場」と呼ぶ。スマート工場同士をネットワークでつなぎ、互いに連携させることでSCM(サプライチェーン管理)の効率化を図る。中長期的には、ドイツ国内の製造業全体をあたかも一つの大きなスマート工場として機能させる構想を持つ。

 産学官が連携して実現を目指す。もともとはドイツ政府が2010年に公表した「High-Tech Strategy 2020 Action Plan(ハイテク戦略2020)」における11プロジェクトのうちの一つ。2011年に具体化した内容がインダストリー4.0として提示された。産業界からは、独ボッシュや独シーメンス、欧州SAPなどが中核企業として参画する。独フラウンホーファー研究機構などの研究機関も技術開発の中心となっている。

 インダストリー4.0は「第4次産業革命」とも呼ばれる。最初の産業革命は18世紀末に始まった、蒸気機関で駆動する機械式の生産設備導入である。第2次産業革命は20世紀初頭で、電力を使った生産設備と分業制の導入による大量生産方式の普及だ。第3次産業革命は、1970年代の初めから現在まで続いている。PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)に代表される電子機器やIT技術の導入による、生産工程の自動化を指す。

 実現するためには「サイバー・フィジカル・システム」という概念の実装が必要だ。製品の製造工程から出荷されるまでのあらゆるデータをスマート工場から収集し、コンピュータ上でシミュレーションする。製造工程を仮想空間上で再現する。

 サイバー・フィジカル・システムが実現すれば、工場は市場動向や受注変動に対してリアルタイムに対応できる。例えば、受注が変動した場合、それを適用したシミュレーションに従って製品を製造する。工場や生産設備は互いに情報を交換し合い、作業を指示し合う。あらかじめ決められた生産計画に従う必要は無くなる。

 既存工場をインダストリー4.0に対応させるには、受発注を管理するERP(統合基幹業務システム)、工場での生産管理を担うMES(製造実行システム)、生産設備を制御するPLCが、相互に連携する必要がある。各システムが互いに連携するためには、ネットワークの通信プロトコルやデータ形式の規格が標準化されていなければならない。

 IoTを活用して、工場の生産性を高めたり、製造業のビジネスモデルを変革したりする取り組みはドイツ以外にもある。米国では2014年に、米ゼネラル・エレクトリック(GE)、米インテル、米IBM、米シスコシステムズ、米AT&Tの5社がIoT普及推進のためにIIC(インダストリアル・インターネット・コンソーシアム)を設立。200以上の企業・団体が参加する。日本では2015年6月に「インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ(IVI)」が設立された。富士通、日立製作所、三菱電機などが参画する。