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 NTT西日本(西日本電信電話)は2017年4月から営業担当者1500人に、PCとしても使える日本マイクロソフトのタブレット「Surface Pro 4」を順次配布している。担当者は顧客情報や商談情報、提案資料などを格納したSFA(営業支援システム)が稼働する「業務環境」や、メールやスケジュール管理といったシステムを含む「OA環境」に外出先からアクセスできる。

 業務環境とOA環境はNTT西日本の営業部門の主要な社内システムだ。顧客情報などの漏洩を防ぐため、従来は社内のPCからしかアクセスできなかった。営業担当者は顧客情報やメールを確認するために、外出先からオフィスに一度戻る必要があった。

 Surface Pro 4の導入により、営業担当者は両環境に社外からアクセスできるようになった。「顧客への訪問に、車で片道1時間以上かかる営業拠点もある。担当者からは『外出先でメールを確認できて、仕事が円滑に進む』と好評だ」と、導入に携わったNTT西日本の林達之和歌山支店ビジネス営業部営業部門長は話す。

まずタブレット300台を試用

 Surface Pro 4の導入は営業部門の働き方改革を中心とする、営業改革プロジェクトの総仕上げと言える。

 NTT西日本がプロジェクトを始めたのは2014年のこと。ベテラン営業担当者の相次ぐ定年退職がきっかけだった。「若手を中心とした営業担当者がベテラン並みの働きができるようにするためには、ITの導入が必須だった」と、システム販売を手掛けるNTT西日本ビジネスフロントの清水和也社長は話す。清水社長は2017年6月まで、NTT西日本のスマートビジネス推進部長として営業改革プロジェクトを統括してきた。

図 NTT西日本の営業部門が直面していた課題と解決のプロセス
営業担当者の社外の働き方をITで改革(写真提供:NTT西日本)
図 NTT西日本の営業部門が直面していた課題と解決のプロセス
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 ただ、最初からSurface Pro 4の導入を決めていたわけではない。まず、持ち運びに便利なタブレットの採用を検討。2015年10月にタブレット300台を試験導入した。

 タブレットからアクセスできたのは業務環境のみ。社外から顧客情報や商談情報などを閲覧できるようにした。

 問題になったのはセキュリティをどう確保するかだ。社内のPCから業務環境には専用線経由でアクセスする。社外からアクセスする場合も、同等のセキュリティを確保できる通信ネットワークが必要になる。

 NTT西日本はタブレットから業務環境に接続する通信ネットワークに閉域モバイルサービスを採用した。このサービスを使うとインターネットを経由せず、事前に登録したタブレットから社内ネットワークへ閉域通信網を経由して接続する。専用線並みのセキュリティを確保できるわけだ。

 営業担当者以外のユーザーによるなりすましを防ぐ策も講じた。担当者はタブレットに搭載されたセンサーで指紋をスキャンしておき、生体認証で本人と確認してから、IDとパスワードによるユーザー認証を経て業務環境を利用できるようにした。

 タブレットの試験導入は「オフィスに戻ることなく、外出先で顧客の情報を確認できる」と営業担当者から好評を得た。一方で「社外からメールやスケジュール管理も使いたい」というニーズが出てきた。

 同社はこのニーズに応えるため、業務環境だけでなく、OA環境にも社外からアクセスできるITインフラの整備を決めた。

2つのセキュリティ要件をクリア

 ここでプロジェクトメンバーは課題に直面する。社内の情報セキュリティポリシーに合致する環境を整備するには、2つの条件をクリアする必要があった。

 1つ目の条件は、顧客情報を扱うSFAを含む業務環境はOA環境とは独立したネットワークで運用するというもの。ネットワークが独立していないと、業務環境内のSFAにアクセスして取得した顧客情報を、OA環境のメールで外部に送ることが可能になり、情報漏洩の可能性が高まるからだ。

 NTT西日本は当初、業務環境とOA環境の双方にアクセスできるよう、営業担当者1人にタブレットを2台支給する方法を検討した。だが2台の端末を持ち歩くのは負担がかかり、導入コストもかさむ。

 そこで浮上したのが完全分離接続方式の採用だ。端末は1台だが、アクセスできるのは業務環境とOA環境のどちらか一方に制限し、両環境への同時接続ができないようにする。これで条件をクリアできるめどが立った。

 2つ目の条件は両環境へのアクセスに異なる生体認証を採用すること。同社の情報セキュリティポリシーは業務環境とOA環境の両方に同一の指紋認証を使うことを許していない。

 プロジェクトメンバーは2種類の生体認証を1台で使える端末を探した。その条件を満たしていたのがSurface Pro 4だった。

 本体のディスプレー上部に内蔵したカメラを使った顔認証機能を利用できる。キーボードを兼ねた付属の「タイプカバー」には指紋認証用のセンサーが組み込まれている。本体とタイプカバーを組み合わせれば、顔認証と指紋認証の2種類が使える。

顔認証を使い商談を円滑に

 同社は生体認証の使い分けにもこだわった。顔認証はSFAを含む業務環境へのアクセスに使うことに決めた。「顔認証は担当者がSurface Pro 4のタイプカバーを開いて起動させる数秒の間で完了する。起動後に顧客への説明をスムーズに始められる」と、清水社長は説明する。

 センサーに指を置くひと手間が必要な指紋認証はOA環境の認証に使う。メールやスケジュール管理などは商談の場以外で使うことが多いからだ。

 セキュリティに関する2つの条件をクリアしたことで、営業担当者は社外から業務環境、OA環境の双方にアクセスできるようになった。

 営業担当者がSurface Pro 4を起動すると生体認証の選択画面が表示される。顧客情報を確認するために業務環境を利用する場合は顔認証を選択すると、自動で認証処理が始まる。パスすると業務環境用のIDとパスワードの入力画面が自動表示される。営業担当者が入力してユーザーと認証されると業務環境につながり、SFAを使える。

 もしOA環境にアクセスしたくなったら、いったんログオフする。その後、表示される生体認証の選択画面で指紋認証を選択する。センサーに指先をタッチして認証が終わると、OA環境用のIDとパスワードの画面が現れる。そこで認証が済めば、OA環境のメールなどにアクセスできる。

 OA環境を使っているときは完全分離接続方式を採用しているので、業務環境のデータにはアクセスできない。「業務環境上のSFAのデータをOA環境のメールで社外に送信する」といった使い方を防いでいる。

提案コンテンツを1週間で展開

 NTT西日本が営業改革プロジェクトで進めたのはSurface Pro 4の導入だけではない。営業担当者に営業に関する情報をタイムリーに届ける施策も並行して進めてきた。

 営業担当者が顧客への説明に使う提案資料の電子化はその一つだ。タブレットの試験導入を始めた2015年10月から取り組んできた。現在は数百種類のコンテンツを提案に生かせる。

 新しい商品やサービスが登場すると、本社の企画部門の担当者はパンフレットの電子文書を新たに作成し、SFAに公開する。営業担当者はその文書をSurface Pro 4から利用できる。

 紙のパンフレットを使っていた従来は文書の制作後、印刷して現場に配布する手間がかかり、現場の営業担当者の手元に届くまでに1カ月はかかっていたという。現在では「パンフレットの内容を検討してから現場へ展開するまで1週間ほどしかかからない」と清水社長は説明する。

 提案資料の電子化でコンテンツの種類が増えた。「顧客からオフィスに電話をかけると、スマートフォンに転送される」といったビジネスフォンの機能を手順を追って紹介する動画や、顧客企業のセキュリティへの取り組み状況を入力すると必要な対策を指摘する診断コンテンツなどもそろえているという。

図 営業担当者向けのIT環境を整備したことで得られたメリット
提案資料の迅速な展開が可能に(画像提供:NTT西日本)
図 営業担当者向けのIT環境を整備したことで得られたメリット
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見込み客情報をすぐ画面に表示

 情報をタイムリーに届けるもう一つの施策として、見込み客に関する情報をSFAに集約し、新規顧客の獲得につなげる取り組みを進めている。ネットを活用したデジタル営業とも言える。

 NTT西日本はSFAで様々な顧客応対情報を管理している。「光ファイバーを活用した通信サービスのフレッツ光を提案したら、興味を持ってくれた」といった提案営業に関する情報や、「サービス関連の情報提供サイトから資料請求を受け付けた」といったWebサイトの情報などだ。

 こうした情報を営業担当者にすぐに知らせる仕組みを組み込んでいる。2016年10月には、見込み客に関する新しい情報がSFAに登録されると、営業担当者のSurface Pro 4に自動でプッシュ通知をする仕組みを開発した。

図 デジタル営業の仕組みを整備して確立した情報の流れ
サイトやセンターからの顧客情報をプッシュ通知(画像提供:NTT西日本)
図 デジタル営業の仕組みを整備して確立した情報の流れ
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 この機能により、通知を受けた担当者は即座に顧客に訪問アポイントを入れるといった機動的な営業が可能になったという。見込み客だけでなく、サービスの不具合に困る既存顧客を迅速にフォローすることもできる。

 今後は営業部門でのモバイルワークの浸透を図っていく。「顧客と会ってニーズを探ったり、適切な提案を考えたりする価値ある時間を、営業担当者たちの日々の仕事のなかで増やしていきたい」と、改革プロジェクトを進めるNTT西日本の安井章貴スマートビジネス推進部営業推進担当主査は話す。