クラウドの利用が進む中、DB活用が焦点になってきた。既存DBのクラウド化に加え、マネージドサービスも有力な選択肢。オンプレミスとの違いを押さえることが活用の第一歩だ。他社のクラウド活用事例には、大きなヒントがある。

 クラウドという言葉が世に出てから10年近くが経つ。最近では「まずクラウドを検討して、ダメならオンプレミス」というクラウドファーストの方針を採用する企業が珍しくない。「クラウドでしか実現できないシステムを構築する」というクラウドネイティブなシステムも登場してきた。

 特にデータ活用を進めるに当たり、クラウド上のデータベース(DB)の役割が重要になってきた。これまでの製品に加えて、クラウドネイティブなDBも選択肢になる。

 本連載では、クラウド上でDBを活用するための勘所を解説する。今回は、クラウドDBを使うメリットや特徴を見た上で、選択の指針を示す。

クラウドDBのメリット

 クラウドは「使いたいコンピュータリソースを、使いたいときに、必要なだけ使えること」がメリットである。この考え方はクラウド上に配置されるDBでも変わらない。トランザクション数の増加に合わせてCPUを追加したり、データ量の増加に合わせてストレージを追加したりするスケールアップが簡単に行える。

 製品やアプリケーションのロジックによっては、データベースを複数に分割する「シャーディング」など水平分散により、サーバー数を増やすスケールアウトにも対応できる。スケールダウンやスケールインも可能なので、キャパシティプランニングに悩まされやすいDBは、クラウドのメリットを享受しやすいソフトの一つといえる。

 商用DBでは、クラウドへの移行に際し、ライセンスや保守費用の制約を受けることがある。しかし、MySQL やPostgreSQLといったオープンソースソフトウエア(OSS)のDBであれば、こうした心配はない。オンプレミスでは考えられないメリットを生かした使い方は、クラウド上のDBを推進するきっかけになった(図1)。

図1 データベースをクラウドに乗せるメリット
運用管理はクラウドが代行
図1 データベースをクラウドに乗せるメリット
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 その一方、“基幹系”と呼ばれる業務システムのように、クラウドでの利用があまり進んでいない領域もある。自社運用が多いため、独自のノウハウを持つインフラエンジニアが運用してきたというのが大きな理由だ。

 業務システムではOracle Database やMicrosoft SQL Serverなど商用DB を多用するため、ライセンスをクラウドに持ち込めるか否かも課題になる。しかし最近は、商用DBベンダーがクラウド戦略を強化しており、この流れも変わりつつある。

マネージドサービスも選択肢に

 クラウド上にDBを構築するには、仮想サーバー(コンピュートサービス)の上にDBソフトをインストールするか、クラウド事業者が提供するDBのマネージドサービスを利用する。

 仮想サーバーを利用した場合、サーバーがクラウド上で動いていること以外はオンプレミスと変わりがないので、これまでのノウハウが生かせる。ユーザー自らが環境構築する必要はあるが、DB製品やバージョンの選択など自由度は高い。

 デメリットは、運用管理の手間がオンプレミスで動かした場合に比べてあまり減らないことだ。ハードウエアより上位レイヤーに位置するOSやミドルウエアの管理責任はユーザーにある。クラウド事業者に任せられるのは、ハードウエアの調達や維持といったインフラ管理の部分だけだ。

 マネージドサービスでは、Webブラウザーから必要な情報を入力するだけでDBが構築される。インストールや初期設定などのスキルは不要。バックアップやパッチ適用といった運用もクラウド事業者に任せられる。

 ただし、マネージドサービスは利用可能なDBのバージョンに制約があったり、機能制限が設けられたりしていることがある。このため、構築や運用の手間が省ける代わりに、費用が割高になるケースもあり得る。自前で運用管理するよりもコストが安いのか、見極めた上で採用すべきだ。

 リレーショナルデータベース(RDBMS)型、データウエアハウス(DWH)型、NoSQL型、キャッシュ型など多彩なマネージドサービスがある。代表例を以下に示す。

●Amazon RDS

 Amazon Web Services(AWS)上で提供されるRDBMSサービス。データベースエンジンとして、Ama z o n Aurora、PostgreSQL、MySQL、Ma r i aDB、Or a c l e Da t a b a s e 、Microsoft SQL Serverをサポートする。

●Amazon Redshift

 AWS上で提供されるDWHのサービス。列指向のアーキテクチャーを採用しており、複数ノードにまたがってクエリーを並列実行できる。

●Microsoft Azure SQL Database

 Microsoft Azure上で提供されるRDBMSサービス。Microsoft SQL Ser verの機能をクラウド上で提供する。Microsoft SQL Serverとほぼ完全な互換性があり、データの3重化保護や自動フェイルオーバーといった機能を備える。

●Oracle Database Cloud Service

 Or a c l e Cl o u d 上で提供されるRDBMSサービス。オンプレミスと全く同じOracle Databaseソフトを使っているため、互換性が高く機能制限がない。スキーマ単位、インスタンス単位でサービスを選択できるほか、各種オプション機能を含むクラウド専用のエディションを用意する。

●Google BigQuery

 Google Cloud Platform上で提供されるDWHのサービス。テラバイト級のデータであっても数秒でクエリーを実行できるなど、大量データを使った分析に向く。

 ここで取り上げたDB以外にも、現在数十種類のマネージドサービスがクラウド上で提供されている(図2)。

図2 主要なDBマネージドサービス
クラウドネイティブなDBも提供
図2 主要なDBマネージドサービス
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 オンプレミスからマネージドサービスに移行する場合は、Amazon RDSのようにオンプレミスと同じデータベース製品をサービス化したものが有力な候補になる。

 一方、分析など特定の用途がある場合は、Amazon RedshiftやGoogle BigQuer yのようなクラウド専用のサービスも候補に入ってくる。クラウドは新サービスのリリースや機能拡張が頻繁なため、常に最新情報を確認しながら、各サービスならではの特徴を理解することが大切である。

DBのハイブリッド構成も視野

 クラウド上でDBを利用する上でどのサービスが最適かは、ユースケースによって異なる。とはいえ、DB選定という観点では、オンプレミスとさほど手法は変わらない。機能要件はもちろんのこと、可用性や性能、運用保守性や移行性といった非機能要件を基にサービスを絞り込む。

 その際、クラウドならではの考慮事項を押さえておくと、身の丈にあったサービス選択が可能になる。例えば可用性の要求に対して、データの多重化や自動復旧を提供しているマネージドサービスがある。クラウドは無条件で可用性を保証しているわけではないので、設計責任は利用者にあることを踏まえてサービスを選ぶ必要がある。

 性能面では、スケールアップの柔軟性がクラウド最大の武器であるが、過信は禁物だ。性能劣化のたびにスケールアップしていたのでは、コストが高く付く。DBを一つにする必要がなければ、メインの処理はDB-A、集計処理はDB-Bのようなハイブリッド構成も視野に入れて考えるべきだ。

 ハイブリッド構成で活用を検討したいのが、DWH型やNoSQL型、キャッシュ型などクラウド専用で提供されているDBのマネージドサービスだ。RDBMSとこれらを組み合わせると、適材適所を推し進めながら、システム全体の性能を引き上げられる(図3)。

図3 DBマネージドサービスの種類と特徴
DBのハイブリッド構成も視野に
図3 DBマネージドサービスの種類と特徴
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ユーザー事例に大きなヒント

 マネージドサービスに代表されるような、クラウドならではのサービスを活用するには、二つのアプローチが有効である。

 一つは、事例の読み解きだ。クラウドの国内事例はかなり充実しており、業種別、用途別の事例が多数公開されている。クラウドは黎明期を過ぎ、今ではベンダーよりもユーザーのほうがより実践的な知識を保持しているといっても過言ではない。もし自社と似た案件の事例を見つけられれば、大きなヒントになる。

 クラウドの事例はユーザーが主体となって発表されることが多い。ここでは成功例だけでなく失敗例や苦労話にも触れられている。これはベンダー主導の情報発信からはなかなか得られないことである。

 もう一つは、まず試してみることだ。クラウドでは事例や価格、スペックの情報がすぐ手に入る。見積もりを取らずに即日使えるサービスがほとんどなので、ユーザー主導でアクションを起こせる。これがオンプレミスとの大きな違いである。

 事例化されている企業の多くは、クラウドの有効性を自ら試して成功を収めている。もちろん失敗するリスクもあるが、その損失はオンプレミスと比べれば高が知れている。

 先にクラウドの事例には失敗例や苦労話が含まれていると述べたが、ユーザーはプレゼンテーションのなかで笑顔さえ見せながら失敗を振り返る。それは失敗こそが成功への必要条件だったということを認識しているからに他ならない。

 昨今、DB活用というテーマでは、ビッグデータやI oT( I n t e r n e t o f Things)といったバズワードと実需の狭間にあるようなテクノロジーが数多くある。これらがビジネスの成功に直結するか100%の確証を持って判断できるケースはほとんどないだろう。クラウドはこうした最新のテクノロジーと私たちをつなぐきっかけになる存在である。

 アイデアが浮かんだなら試してみる。クラウドの時代にはそうした思い切りが成功の鍵を握る。

関 俊洋(せき・としひろ)氏
アシスト
データベース技術本部
データベースシステムの構築や運用トラブルの解決といったフィールドサポート業務を経験後、新製品の検証やハードウエアとデータベースを組み合わせたソリューション(DODAI)の立ち上げに従事。現在はデータベースの価値や魅力を伝えるための執筆・講演活動を行っている。