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 「もしIT産業が地球環境を保護しつつ発展したかったら、量子コンピュータの実現に取り組むしかないのではないか」。東京大学工学系研究科物理工学専攻の古澤明教授はこう語る。

 古澤教授はICTおよび製造分野のバーチャル展覧会である「ITmedia Virtual EXPO 2014 秋」で、「量子コンピュータ実現の可能性」と題して講演し、量子コンピュータの実現に向けた研究開発の現状と将来について語った。ITmedia Virtual EXPO 2014 秋は2014年9月9日から9月30日まで開催している。古澤教授の講演はオンデマンドで視聴できる。

 古澤教授は、量子コンピュータ研究のキーパーソン。古澤教授ら東京大学のグループは2014年8月、完全な光量子ビットの量子テレポーテーションに成功したと発表した。量子ビットの転送効率を従来技術に比べて100倍以上高めることができるという。

 講演で古澤教授は、「(IT業界が)これまでと同じような伸び方で大きく発展したいのであれば、量子コンピュータに取り組むしかない」と語る。

 古澤教授は「従来型のコンピュータは大量の電子を回路に流し、それにより演算処理を実行している」と表現する。これに対して量子コンピュータは「量子一つひとつを丁寧に扱う」(古澤教授)ような方式だ。

 現状のコンピュータは構造上、処理性能の向上に従ってエネルギー消費は上がることになる。一方、量子力学に基づいたコンピュータアーキテクチャは、より高度なレベルでエネルギーの効率性を確保しつつ演算処理を高速化できるという。

 古澤教授は従来型のコンピュータについて「微細加工の技術やエネルギー消費の観点から考えると、もうそれほど高速化できないレベルにまで達している」と評する。そして「IT分野は地球環境の保護や省エネルギーと、IT産業のさらなる発展を両立させたいなら、量子コンピュータに取り組むべきだ」と提起する。

 このテーマに関連して古澤教授は、「量子コンピュータは従来型のコンピュータより高速であるべき」という課題設定に対して異議を唱える。「今までより高速化できるというニーズから量子コンピュータの開発に取り組むというだけでなく、例えば従来の10分の1の消費電力で動くコンピュータを実現するといった観点からも、量子コンピュータの開発をとらえることが大切だ」と続ける。

 「地球環境保護やエネルギーの問題が顕在化している中、量子コンピュータは時代の要請にマッチしている。研究を通じて、持続的なコンピューティング環境の実現に貢献していきたい」(古澤教授)。