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 「人と組織を守りたければ、『想定外のことを想定する』が必要だ。そのためにも、普段から時間、費用、人材を確保し準備しておくことが欠かせない」。

 2011年の東日本大震災で岩手県災害対策本部の医療班を指揮した秋冨慎司氏は、危機管理の要諦をこう語る。

 同氏は岩手医科大学付属病院岩手県高度救命救急センターの助教。2005年に発生したJR福知山線脱線事故における医療活動にも従事するなど、複数の災害現場での経験がある。

 秋冨氏はICTと製造分野のバーチャル展覧会である「ITmedia Virtual EXPO 2014 秋」の講演「日本の危機管理を変える 災害対応スペシャリストが語る課題」に登場し、日本人および日本の組織が危機対応のレベルを高めるために必要なポイントを伝えている。

 聞き手は危機管理とBCPの専門誌である「リスク対策.com」の中澤幸介編集長。同展覧会の会期は9月9日から30日まで。この講演は会期中にオンデマンドで視聴できる。

 日本は東日本大震災を経験し「平常時から対策をしておくべき」という見方が定着しつつある。しかしそれでも備蓄などに対する投資や避難訓練にかけるコストは「なるべくカットしたい対象」という意識も残っている。これに対して秋冨氏は「それでは守りたい対象は守れない」と指摘する。

 2012年に開催されたロンドン五輪におけるセキュリティ対策の投資は、総額で900億円前後とされている。「危機はいつやってくるか分からない。それでも普段から(適切な)コストをかけ準備をしていれば、人も組織も事業も守れる。このような共通認識をより高いレベルで確立させることが、今の日本には必要だ」と訴える。

「人ごとではない」という意識を持つ

 講演の後半では、在日米陸軍基地管理隊 緊急業務局統合消防本部の熊丸由布治氏も登場。2020年の東京五輪をひかえ、「日本においては個人一人ひとりの意識レベルを高める必要がある」と説く。

 熊丸氏は2006年に日本人初の在日米陸軍消防本部統合消防次長に就任。企業の危機管理アドバイザーとしても活動しているという。

 「例えばテロについて、多くの人は人ごとだととらえている。しかし、実は多くの犠牲者は民間人であることを知っておくべきだ」(熊丸氏)。熊丸氏によれば、世界における即製爆弾の被害者の数は、過去3年間で6万人以上にのぼる。そのうち約8割は民間人という。

 「(1995年の地下鉄サリン事件で)日本は首都に毒ガスを撒かれた経験を持つ。しかしその記憶が薄まりつつある。だからこそ改めて『人ごとではない』という意識を個人が強く持ってほしい」と呼びかける。

 続いて熊丸氏は「危機に直面した時に人と組織を救うのは、人と組織に定着させた正しい知識と正しい技」と述べつつ、教育訓練の重要性を強調する。「危機に直面した際、人ひとりでは対応のしようがない。教育訓練を通じて組織のチーム力を上げていくことが大切だ」。

 教育訓練のプログラムに必要な要素は大きく、知識、スキル、発揮能力の3つ。熊丸氏はこれらを一体的なものと認識しており「KSA(Knowledge、Skill、Abilityの略)」と呼ぶ。

 「知識を学び、反復練習によりスキルとして身に付け、いざというときにも発揮できる能力になるよう磨いていく。これにより危機対応に必要なチーム力が組織に定着していく」 (熊丸氏)。