写真●日経コンピュータの中田敦記者
写真●日経コンピュータの中田敦記者
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 「人工知能によって、コンピュータがデータの意味を読み取れるようになる。グーグルもアマゾンも社運をかけて人工知能に取り組んでいる」。「ITpro EXPO 2014」(2014年10月15~17日、東京ビッグサイト)のメインシアターで、日経コンピュータの中田敦記者が人工知能のインパクトを解説した(写真)。

 クラウドやビッグデータ、人工知能などの記事を日経コンピュータで執筆してきた中田記者は、「グーグルとアマゾンの動向を追いかけ続けた結果、必然的にこうした分野に注目することになった」と説明。データの意味を理解する人工知能は既に両社の力の源泉になっており、それぞれ自動運転車や配送ドローンといった将来の取り組みにも応用することになるとした。

 では、人工知能はどの程度の水準まで来ているのか。その例として紹介したのが、写真に何が写っているかを推定するサービス「clarifai」だ。風景写真などをclarifaiで認識させたときの結果を見せながら、写真に写っているものを高い水準で認識できる状況にあることを示した。

 また、グーグルが「YouTube」で提供する、動画の手ブレ補正サービスおよび「Google+」で提供する連続写真に基づいて周囲の人を消した画像を生成するサービスを取り上げ、「画像データのどの部分が被写体でどの部分が背景かを理解できるからこそ実現したものだ」(中田記者)とした。

行き着く先は、人間が教えなくても最適な行動を取れるプログラム

 その人工知能分野で起こっている最新のトレンドとして解説したのが「機械学習」と「ディープラーニング」である。「水着の写真を自動で集めるプログラムを作ったら、力士の写真をたくさん集めてしまったという笑い話もある」(中田記者)というエピソードを紹介しながら、人間の暗黙知を形式知に変えることの難しさを解説。大量の属性付きデータを学習することでコンピュータが自動で形式知を獲得する機械学習によって、コンピュータ将棋がプロ棋士に比肩する強さを持つに至ったとした。

 そして脳の仕組みや信号処理方法を模したディープラーニング(深層学習)により、コンピュータが評価関数の重みだけではなくモデルそのものを構築できるようになったと解説した。

 中田記者はデンソーアイティーラボラトリがディープラーニング手法を用いて開発した、カメラ映像からリアルタイムで人の向きや身長を推定するプログラムを紹介し、コンピュータがさらに深い意味を読み取れるようになったことを説明した。「『人がいる』という情報だけではなく、その人が大人なのか子供なのか、どっちを向いて、どこに行こうとしているのか、といった行動の意味も分かれば、安全な自動運転車の実現に役立つ」とした。

 「行き着く先は、人間が教えなくても最適な行動を取れるプログラムだ」。こう人工知能の未来を示した中田記者は、国内の人工知能研究への警鐘を鳴らす。現在の国内研究の多くが、先行研究で得られた全自動型の機械学習システムを利用し、属性付きデータを流し込むだけになっていると指摘。ある研究者の「もはや人工知能は研究の領域から資本力の勝負に移りつつある」という意見を紹介しながら、データ量や資本力で優位な一部の海外企業が支配的になる可能性を示唆した。