調査会社のアイ・ティ・アールは2015年5月12日、データベース管理システムであるNoSQLの利用動向に関する調査結果を発表した。それによると、NoSQLに対して期待することとして、「クエリ(検索)処理性能の向上」が最も高い割合となり、NoSQLの機能的な特徴である「非構造化データの処理のしやすさ」や「パフォーマンスチューニングの簡素化」といった回答は2割前後にとどまった。性能向上に関する回答が上位を占めたことから、同社では、データ量の増加にともない明確になってきた「RDBMSの処理性能の低下」という課題を、多くの企業がNoSQLによって改善できると期待していると指摘した。
NoSQLに対する企業の取り組み状況では、「NoSQLについて幅広く情報収集をしている」企業が51.7%で最も高い割合となった。「単一製品、もしくは複数製品に対して動作確認を実施している」と回答した企業はそれぞれ3割程度。「補完的ではあるがすでに一部の業務に適用している」企業が11.2%、「既に業務に導入し、日々運用を行っている」は4.9%にとどまった。これらの結果から同社では、国内企業のNoSQLへの取り組みは、現状では情報収集が多く、一部の企業が機能確認や動作検証を開始している黎明期にあると分析。「特に何もしていない」と回答した企業が6.3%だったこともあり、企業におけるNoSQLへの取り組みが進みと利用は今後、増加していくと予測した。
将来的に利用したいと考えるNoSQL製品については、独立したベンダーが提供するNoSQL製品よりも、マイクロソフトやグーグル、オラクル、Amazon Web Servicesといった大手企業の製品を求める意向が高かったという。なお、同社は、Apache HBaseがオープンソース製品でありながら、主要なHadoopディストリビュータの製品にバンドルされている状況についても分析。多くの企業が、NoSQLに対する取り組みを開始したばかりであり、ベンダーからのサポートを必要としていること、テスト利用段階であるために、専用のハードウェア環境を用意することなく利用できるクラウド製品を選択したいと考えていることが、おもな原因であると指摘している。
同社は、今後のNoSQL製品の普及について、機能や性能に関する評価や検証を行う企業が増加すると予測されるが、MongoDB社やDatastax社といったNoSQL製品ベンダー国内法人を設けていないことを指摘。大手SIベンダーの取り組みも少なく、利用者によるコミュニティ主体のサポートが行われているに過ぎないため、NoSQLの利用が現在ではWebサービス事業者やオンラインゲーム事業者のように、多くの開発エンジニアを抱え、オープンソース製品に慣れている企業にとどまっているという。同社は、一般的な企業でもNoSQLが利用されるようになるためには、製品ベンダーやSIベンダーがRDBMSと同様のサポートサービスを提供していく必要があると分析している。
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