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 「経済構造の変化に合わせて、今、職場は変わっていかなければならない」---。2015年3月13日、「Cloud Days Tokyo/ビッグデータEXPO/スマートフォン&タブレット/Security/IoT Japan」で、国際ジャーナリストの蟹瀬誠一氏(写真1左)とサイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏(写真右)が、「もうホワイト企業でなければ生き残れない」とのテーマで対談した。

写真1●国際ジャーナリストの蟹瀬誠一氏(左)とサイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏(右)
写真1●国際ジャーナリストの蟹瀬誠一氏(左)とサイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏(右)
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サイボウズってブラック企業でしたよね

蟹瀬 サイボウズは、かつてブラック企業でしたね。どのようなきっかけで、働きやすさを追求するホワイト企業に転換したのでしょうか。

青野 創業者の私が言うのも何ですが、昔はかなりブラック企業でした。朝出社すると会議室で誰か寝ていたし、土日も仕事をするのが当たり前。2005年当時の離職率はなんと28%もありました。

 4人に1人以上が辞めていく状態だと、採用コスト、教育コストが割に合わない。“経済合理性に合わない”というのが社風を転換しようと思った理由です。きっかけは、社員のためではなく経営の観点でした。

蟹瀬 何から手を付けましたか。

青野 例えば、男性の育児休暇取得率を増やすために、私がコミットして自ら実践しました。男性の育休制度自体は日本のほとんどの企業にありますが、取得率は1%だそうです。エリート路線で働いている男性社員は、トップがコミットして「育休を取れ」と言ってくれないと、キャリアが心配で取れないですよね。むしろ育休を取った人のほうが評価されるくらいに社内の価値観を変えていかないと。

 実は私自身、今、3人目の子供が生まれたばかりで育児時短中なのですよ。“4時まで社長”の看板を立てて働いています。

蟹瀬 英文ビジネス誌『フォーチュン』の働きたい会社ランキングでは、6年連続で1位はGoogleです。Googleは、食事無料、スポーツジムが無料、社内にマッサージがありペット連れもOK。でも、社員が本当に評価しているのは、このようなベネフィット自体ではなく、経営者の考え方だと思いますね。

 とは言え、経営トップが育休や時短を取ることに反対する意見もあるでしょう。社員はどう受け止めているのですか。

写真2●サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏
写真2●サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏
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青野 社長にもっと働いてほしいと考えている社員は当然いるでしょうね。時短で働くと、今までと同じ量の業務はこなせないので、自分が抱えていた仕事を部下に渡す必要があります。でも、ここで、今まで手放せなかった仕事を思い切って部下にまかせてみると、部下のモチベーションが上がったりします。そして、社長であっても、自分にしかできない仕事はあまりないのだと気付きます(写真2)。

ITの時代に画一的な労働力は不要

写真3●国際ジャーナリストの蟹瀬誠一氏
写真3●国際ジャーナリストの蟹瀬誠一氏
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蟹瀬 サイボウズは、経営合理性の観点からホワイト企業へ転換したとのことでした。ではブラックでいるほうが生産性の高い企業は、この先もブラック企業のままでいいのかというと、そうではありません(写真3)。

 今、経済の構造が大きく変化しており、これに合わせて、働き方も変えていく必要あります。工場が経済の中心だった時代には均一の労働者が必要とされていました。金融サービスの時代には知識集約型の労働力に価値がありました。そして今、ITの時代には、社員が画一的であることや知識を持つことより、想像力が豊かであることが大事です。この変化に合わせて、職場も変わらなくてはいけないと考えます。

青野 はっきりしたデータは持ってないのですが、イノベーションと働き方は相関があると感じています。私は松下電器産業(現パナソニック)出身で、そこで見てきた働き方というのは、新卒で入社して結婚したら社宅に入り、課長になって部長になってと、同じ人生の大量生産です。こんな環境で新しい発想が出るでしょうか。少しは変な人が交じっていたほうがイノベーションが生まれやすいと思いますね。

蟹瀬 これから先は人材がより重要な時代になります。工場中心の経済と違い、ITの時代には労働者の入れ替えが容易ではなくなるため、優秀な人材を集めて離さない職場環境が、競争優位性になるでしょう。

お金がなくても企業のホワイト化はできる

蟹瀬 “ブラック企業”と“ホワイト企業”の定義が最近変わってきましたよね。

青野 昔は、ブラック企業とは反社会的組織という意味で使われていましたが、時代とともに、意味が拡張されてきましたね。法律的には問題ないけれど、なかなか家に帰れない雰囲気があるとか、最近はそのようなことまでブラック企業の定義に含まれるようです。

 では逆に、ホワイト企業とは何なのか。食事が食べ放題ならホワイトか、残業が無く早く帰宅できる会社はホワイトか、一概にそうとは言えません。食事は社外で食べたい人もいるでしょうし、たくさん働いて稼ぎたい人もいます。社員の多様性を受け入れられる会社がホワイト企業なのですよ。

蟹瀬 では、現代の意味でのブラック企業をどうやってホワイト企業にしていけばよいのでしょうか。グーグルやサイボウズは、ビジネスが好調で儲かっているからホワイト化できたのではないですか。

青野 サイボウズがホワイト化したのは儲かっていたからでしょうとよく言われますが、お金なんか使わなくても、社員を喜ばすことはできますよ。社員の子供が熱を出したとき、上司が「よし帰れ」と言ってあげる、これだけでよいのです。

蟹瀬 そういう意味では、あらためて、古き良き日本企業に存在した“家族的”な人間関係を見直し、今の時代に合わせて取り入れていきたいですね。