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写真1●参議院議員 総務大臣政務官 長谷川 岳 氏
写真1●参議院議員 総務大臣政務官 長谷川 岳 氏
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写真2●サイボウズ 青野 慶久代表取締役社長
写真2●サイボウズ 青野 慶久代表取締役社長
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写真3●次世代の働き方を模索する熱い思いをぶつけあった
写真3●次世代の働き方を模索する熱い思いをぶつけあった
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 日経BP社が2015年9月30日から10月2日まで開催している「ITpro EXPO 2015」で、総務大臣政務官の長谷川岳参議院議員とサイボウズの青野慶久社長は「日本企業はワークライフバランスを実現できるか」と題した特別講演で対談した(写真1、写真2)。2人はお互いに1971年生まれで積極的に育児に関わるイクメン、そして、ワークライフバランスを自身の問題として捉えて職場でのワークライフバランスの推進役を買って出ているという共通点を持つ。

 40分間の特別講演時間をフルに使って、終始和やかな雰囲気を保ちながらも次世代の働き方を模索する熱い思いをぶつけあった(写真3)。最後は「若い世代の子育てとシニア層の介護。それぞれを仕事と両立させるにはテレワークを活用することが欠かせない。さらにテレワークで多様な働き方を受け入れる企業や省庁でないと優秀な人材を集めらない」という意見で一致した。

総務省はテレワーク利用者が3倍に

 対談の最初のテーマは、総務省におけるテレワークの取り組み。同省は6月に2020年度までにテレワークを勤務形態の一つとして定着させる「総務省テレワーク推進計画」を公表している。この準備として3月に開かれた第1回会合が2人の出会いだったという。長谷川氏は高市早苗総務大臣の命を受けた政務官として、青野氏はワークライフバランスを実践する経営者として参加した。「会合の中で青野さんに『本気でこれやってるのか』『本気度が見えない』『これなら帰る』と怒られ、総務省も本気になった」(長谷川氏)。青野氏は「トップダウンで繰り返しメッセージを発すること」「短い間で目標設定すること」とアドバイスしたという。

 総務省は2015年のテレワーク利用者数の目標を昨年(348人)の3倍に当たる1000人に設定。7月第2週にできる限り多くの職員に積極的なテレワークの利用を促す「テレワークウィーク」を実施したところ、1078人が利用し、早くも目標を達成できたという。この報告に青野氏は「すごい伸びで、怒った甲斐があった」と応えた。

 成果を出せた工夫について、長谷川氏は「『隗(かい)より始めよ』と、事務次官以下、160人中154人の幹部が率先して取り組んだことで、人事考課的にマイナスになるのではと不安を感じていた部下に安心を与えられた。さらにUSB型のシンクライアント端末数を2倍の200本に増やすといったIT面の整備を4月から急いだ。この二つの両輪がかみ合って、成果につながった」と分析した。

 現場はどう変化しているのか。2人は聴講していた総務省の課長代理の女性に突然マイクを向けた。2歳の息子を持つというこの課長代理は「子を生む前までは夜中の2時、3時まで残業していた」が、今は時短勤務を使って夜5時15分には職場を去るという。「『何かあったら、テレワークの端末を持ち帰るのでいつでも相談して』と伝えると部下も安心して『何かあったら相談します』と返してくれるのがありがたい」と話した。長谷川氏は現在、フレックスタイムの導入と、帰宅後の残業が可能となるよう、内閣人事局に働きかけていると明かした。

ライフワークバランスの導入は経営戦略と位置付けよ

 長谷川氏は、総務省がワークライフバランスに取り組むことを周知するために作成したプロモーションビデオを同省サイトでの公開に先駆けて披露した。「クリエーター集団の『WOW!JAPAN』の皆さんと作ったもの。総務省が他の省庁に先んじて、トップランナーとしてリーダーシップを取ってワークライフバランスをやっていくんだというメッセージは、こうしたものできちんと外部に伝えることが大切」と強調した。伝える理由を「ワークライフバランスを考えない省庁はいい人材が入ってこない」からだと話した。

 会話の流れを引き取った青野氏は「ワークライフバランスを実現していくのはスキルじゃない」と持論を展開した。「100メートルを10秒で走れと言わたら、どんなに努力して(スキルを磨いて)もほとんど達成できない。しかし、例えば定時で帰るっていうワークライフバランスはスキルじゃない。『できない』とすぐ人は言うが、そんなことなくて、そこで切って帰る。気合いと根性だけ」。第3子の出産に合わせ、青野社長は今年の1月から8月まで4時で退社したという。「もっと仕事がしたくても気合と根性で退社した」。青野氏はその気合いと根性を持てるかどうかで、魅力的な職場が作れるかどうかが決まっていくとした。

 長谷川氏は「企業価値の向上と職員一人ひとりのワークライフバランスを両立するための取り組みとしては、テレワークこそがその本命となる」とした日本マイクロソフトの平野拓也社長の発言を紹介。「テレワークは労働者側のメリットだけではなくて、仕事の質や効率を上げる経営戦略である」とした。青野氏は職場に長く居座るデメリットを「場所と会う人が固定化されるため得られる情報が相当に制限されること」とした。「外に社員を送り出すと、子育てや家事にがんばる人がいたり、異業種交流する人がいたり、副業して他の業界のことを学んでくる人がいたりする。こういう人が会社の中でダイバーシティを作って、そこからイノベーションが起こっていくと感じている」。

 長谷川氏は総務省が進める「ふるさとテレワーク推進事業」を紹介。地元北海道では別海町が中学校の廃校をテレワーク拠点にして事業を進めていることや、今後は酪農や漁業をICTで発展させていきたいとする意気込みなどを話した。青野社長は「都会から移動する人が持つITの知識が地方の効率を高め、さらに暮らしが良くなるという好循環が回っている。日本の未来を感じる」と評価。さらに、クラウドとセンサーとビッグデータ分析で、農業や漁業に加え、観光や老人の見回りなども手助けできるとした。「地方×ITは今後のキーワードになるだろう」(青野氏)。

政策の行方も左右するライフワークバランス

 対談終盤、青野氏は長谷川氏に対し、経営者への意見を求めた。長谷川氏は「今は優秀な人材こそ時間と仕事の質を選ぶ傾向がある。だからこそ、ワークライフバランスやテレワークを経営戦略として扱うか否かは、経営者の感性次第」とした。「現場の子育て世代がどう(ワークライフバランスを取り入れようと)頑張ってもトップが(取り入れると)判断しない限りなかなか難しい」(同)。

 青野氏も賛同し「実際にワークライフバランスをやるとなれば、制度作りやITの導入、(ワークライフバランスを保つための職場時間の使い方を)やっていいよという風土作りが必要。ここはトップの力がすごくワークする」とした。「昨年、少子化で採用できなくなっていることが経営者の間で大きな問題となった。採用難は世界レベルで進むが日本はひときわ難しい。最近の学生は選ぶ権利があり、内定を持ったまま他の会社を受けるようにもなった」(青野氏)。

 青野氏は続けて、「そうした学生が選ぶのは『泥のように働け』と言う会社か、『ライフステージに合わせて色々な働き方ができる』と言う会社か。採用できなければ会社は小さくなるしかない。経営者が一番恐れているのは、社員が辞めること。社員が辞めたらビジネスを小さくせざるを得ない。『働きたいと思える会社』を作った会社のみ今後、成長できる」と話した。長谷川氏は安倍首相の「新3本の矢」へのコメントを求められ、「出生率の向上も介護理由の離職者の減少も、テレワークが一つの解決策になると信じ、普及を広げている」とした。青野社長は「(ワークライフバランスの導入を経営者に)口説く際には、こっちで子育てパンチ、こっちで介護パンチのダブルで攻めて、経営者の価値観を変えてほしい」と講演を締めくくった。