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定例会見で「知的財産推進計画2016」について触れる、JASRACの菅原瑞夫理事長(5月25日、東京・渋谷のJASRAC本部)
定例会見で「知的財産推進計画2016」について触れる、JASRACの菅原瑞夫理事長(5月25日、東京・渋谷のJASRAC本部)
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 日本音楽著作権協会(JASRAC)は2016年5月25日の定例会見で、政府が5月9日に発表した「知的財産推進計画2016」について触れた。全体として「評価できる」(菅原瑞夫理事長)としたうえで、同計画で打ち出されている「柔軟性のある権利制限規定の具体化」については、慎重な姿勢を重ねて示した。

 菅原理事長は同計画について「これまでの知財計画は同じ文言が書いてあったが、今年は少し踏み込んだ形で具体的な内容が示されている印象を持った」と指摘。具体的には、デジタルネットワークにおける大量の著作物利用のあり方、いわゆる孤児著作物の二次利用を拡大する裁定制度のあり方、二次利用時の手続きを簡略化する手段として欧米でも議論されている「拡大集中許諾」などを挙げ、「日本の社会の今後を見据えた内容で評価できる」とした。

 とはいえ、同計画が掲げる具体的な方針には慎重な姿勢を崩さない。新たな用途で著作物を二次利用する場合などを想定し、一定の条件下で二次利用をしやすくする「柔軟性のある権利制限規定の具体化」については「これまで10年ほど『日本版フェアユース』や『ABCの3類型』などの方針が出て、いろいろ言われている」(浅石道夫常務理事)と指摘。過去の同計画で提示されながら、権利者側の反対が相次ぎ見送られた「権利制限の一般規定」などと実質的に同じとの見方を示した。

 そのうえで浅石常務理事は、今回の方針について「我々はこれまでも、(法改正には)立法事実(法改正の判断の基礎になる社会的な事実)が必要なのに抜けていると言い続けてきた。その結果今回出てきたのは『イノベーション』。イノベーションが立法事実になるのか。そもそもイノベーションの定義もない」と語り、著作権法改正の必要性に疑問を呈した。

 同計画では著作権の権利制限規定について「新たなイノベーションへの柔軟な対応と日本発の魅力的なコンテンツの継続的創出に資する観点から、柔軟性のある権利制限規定について、次期通常国会への法案提出を視野に(中略)必要な措置を講ずる」と具体的な記述を盛り込み、併せて適用範囲などを定めたガイドラインの創設も提唱している。これに対し権利者側は、許諾権の範囲が大幅に狭まる懸念や二次利用を差し止めるための訴訟負担が重くなる懸念などがあるとして強く反発している。

 同計画では、人工知能(AI)による創作物を何らかの形で保護する枠組みの新設を提言している。これについては「音楽著作物の分野で(AI創作物が)どのくらい発展していくかは、もう少し見守りたい」(浅石常務理事)と語り、現段階で法整備に踏み込むのは時期尚早との認識を示した。