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日立製作所 ICT事業統括本部 Senior Technology Evangelistの渡邉友範氏
日立製作所 ICT事業統括本部 Senior Technology Evangelistの渡邉友範氏
写真:井上 裕康
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 「IoTと聞くと、経営陣や企画部門はワクワクするだろうが、現場がそうとは限らない。まず『人をつなぐ』ことから始めることだ」。2016年7月22日、東京・目黒のウェスティンホテル東京で開催した「第4回イノベーターズ会議」(日経BP社 日経ITイノベーターズ主催)で、日立製作所 ICT事業統括本部 Senior Technology Evangelistの渡邉友範氏が登壇。「データでワクワクしよう!」と題する講演で、IoTやAIを現場に導入した3つの事例を基に、IoTやAIでイノベーションを起こすコツを紹介した。

 最初に渡邉氏が示したのが、小売業でIoTに基づく在庫最適化システムを導入した事例である。

 日立製作所はシステムの導入に先駆けて、同社の上流設計手法「EXアプローチ」を基に、過剰な在庫が生じる原因を探った。

 店舗の現場を観察して写真やビデオに記録し、従業員へのインタビューも実施することで、現場が何を大事にして仕事をしているかを探った。すると「接客からバックオフィスまで『お客様第一』の理念が浸透している、素晴らしい職場であることが分かった」(渡邉氏)という。

 だが、この理念こそが、過剰在庫の原因になっていた。バックヤードの商品補充係も顧客対応をしており、「期待した商品がなかった、とお客様にがっかりされたくない」との考えから、在庫を過剰に持つようになったという。「この結果には、顧客も大変に驚いていた」(渡邉氏)。

 そこで日立製作所は、経営陣、企画部門、IT部門、そして現場の従業員に集まってもらい、新システムのアイデアを募った。「お客様第一」という理念を大事にしつつ、必要なときに必要なだけの在庫を確保するには、どうすればいいか。複数の組織が一堂に会して議論することで、「新システムでは、在庫だけではなく、商品の販売動向データも集めてはどうか」といったアイデアが次々出てきた。

 こうしたアイデアに基づいて在庫管理の新システムを開発し、モデル店舗で試行したところ、バックヤード在庫量を60%削減できたという。「IoTでイノベーションを起こすには、優れた現場と、課題を抱える経営陣など、思いを持った人同士を『つなぐ』ことが重要になる」(渡邉氏)。
 
 二つ目の事例は、日立製作所の製造工場でのデータ活用である。
 
 これまで工場では、部品の在庫状況、生産ラインの稼働状況、人の配置といったIoTデータを個々のシステムが管理していた。だが、それぞれのデータはフォーマットが異なるため、現場のマネージャーは手作業でフォーマットを合わせながら分析せざるを得なかった。

 そこで日立製作所が取ったアプローチは「とにかくデータを一か所に集めてしまえ」というもの。まず、複数のデータを集約・分析できる「設計・生産管理クラウド」を構築し、様々な部門のデータを皆で共有できるようにした。これまでマネージャーが個人でExcelマクロを組むなどしていた分析の手法も、クラウド上で共有した。「細かい数字を合わせるのは難しいが、だいたいの傾向はつかむ分には十分だった」(渡邉氏)。

 すると、部門の垣根を超え、データ活用の提案が相次いだ。「これが見えるなら、あれも見たい、といったアイデアがたくさん出てきた」(渡邉氏)。多くの部門が自主的にIoT活用のワーキンググループを作り、このデータで何ができるかを議論した。「現場は創意工夫にあふれている。そこに、データを簡単に活用できる環境を提供し、『データでワクワクさせる』ことが重要だ」(渡邉氏)。

 三番目の事例は、日立製作所の物流倉庫におけるピッキング業務の効率化だ。AIを導入し、ピッキングの生産性を8%高めた。
 
 これまでのピッキング作業のデータを分析したところ、多くの従業員が同じ商品を取りに行くため、その周囲が混雑し、効率的なピッキングを妨げていることが分かった。

 そこで同社はAIを使い、ピッキングを効率化するツールを開発した。AIの指示に従うことで、局所的な混雑を起こさずにピッキングできる。

 さらに、前日の実績データを基にAIが学習し、より効率的な指示を出せるようにした。現場の熟練者の工夫は、他の人に伝えることが難しい。AIであれば、熟練者のノウハウを学習し、他の従業員に伝えることができる。「AIを賢く使えば、データで楽ができる」(渡邉氏)。

 渡邉氏は、これら3つの事例を通じて「人をつなぐ、データでワクワクさせる、データで楽をすることが、多くのアイデアを産みだし、IoTやAIのイノベーションにつながっていく」と語った。